2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H02564
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山羽 悦郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60191376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 貴史 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10400003)
松原 孝博 愛媛大学, 南予水産研究センター, 教授 (60443389)
後藤 理恵 (風藤理恵) 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授 (70399997)
斎藤 大樹 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授(特定教員) (90396309)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発生工学 / PGCs / 始原生殖細胞 / 生殖系列キメラ / 育種 / in vivo培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、セルソーターにより初期胚より大量の始原生殖細胞(PGCs)を分取し、宿主へ移植し、この生殖系列キメラの中で育種に相応しい形質を選抜する事を目的としている。これには、セルソーターによるPGCs分取と、分取したPGCsを宿主胚へ移植する技術の確立が求められる。PGCsは大型の細胞で壊れやすい。本年度は、2社のセルソーターをPGCsの分取に用い、分取条件の設定を行った。 1.材料として、海産魚のカタクチイワシとスマ、淡水魚のキンギョおよびゼブラフィッシュの胚を用いた。受精卵へ人工的なmRNAを注入し、胞胚期あるいは胚体形成期の胚のPGCsをGFPで可視化した。胞胚期、または胚体形成期の胚をホモジナイズし、キレート剤処理や酵素処理により細胞を解離させ、ソーティングを行った。 2.ディスポソーティングチップ様式のセルソーターでは、これまで行われてきた培養液による分取ではGFP蛍光をもつPGCsは確認できず、細胞膜の保護剤を加えた分離培養液により分取が可能となった。遠心分離処理は分取されたPGCsにダメージを与えた。分取したPGCsを細胞塊とし、宿主胞胚へ移植し生殖系列キメラを誘導する方法を確立した。このことから、複数の遺伝的な背景を有するPGCsを生殖系列キメラ生殖腺中でin vivo選抜するための基本的な方法が確立した。 3.ダメージレス様式のセルソーターでは、海産魚及び淡水魚の胞胚期におけるPGCsが分取された。この一部をゼブラフィッシュ胚へ移植したところ、生殖腺領域に到達した。このことから、ごく初期の魚類胚から健全なPGCsを分取することが可能となった。 4.抗体を利用してPGCsを分離するために生殖細胞特異的遺伝子の塩基配列の解析を行った。また、PGCs特異的抗体の調整にあたり、PGCs抗体の良否を評価するためのダメージの少ないPGCsを利用したアッセイ系を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
材料とする魚の胚は、実験魚以外は特定の産卵期に限り得られる。本年度に導入したセルソーターの納期は、春の産卵期より後になってしまった。本研究の実施者が用いている材料は春産卵の種が多く、実施が次年度にずれ込んでいる事が否めない。今後、セルソーターを用いて実験を行う事ができる秋産卵の種(サケマス等)を材料として増やしていく事が必要と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
A) 宿主の生殖腺内で培養による育種適合ゲノムの選抜:平成28年度には、ディスポソーティングチップ様式のセルソーターを用い、GFPで可視化したPGCの分離条件、移植条件の検討を行ってきた。一方、半数性のPGCと二倍性のPGCをソーターにより分離することはできていない。このため、Hoechst33342等の生体染色剤で胚細胞の核を染色し分取する技術の確立を目指す。また、多様性を持った配偶子の利用に資するため、様々なキンギョ集団の精子の凍結保存を行うとともに、その遺伝的多様性の検定を行う。 今後は、平成28年度に確立されたPGC分離技術を用い、A-1)多様性をもったPGCsを異種胚へ移植した生殖系列キメラの誘導を行う。 これにより、モデル魚を用いた亜科間、科間宿主生殖腺内で配偶子に分化するゲノムの選抜を行う。一方、倍数性の異なるPGCsの分取が可能となった場合、A-2)半数体胚より半数性PGCsの分離を行い、同種あるいは異種胚へ移植した生殖系列キ メラの誘導を行う。これにより、生体内培養で配偶子に分化することが可能なゲノムの選抜を行う。 B)遺伝的多様性を有するPGCの分離:本項目では、多様な遺伝的な背景を持つ胚より、ポジティブ及びネガティブな方法を用い、体細胞系列の細胞と生殖系列の細胞を分離する技術を開発し、遺伝的多様性を有するPGCsを得る。その分離方法として、(B-1) PGCsの細胞膜に発現するCxCr4の抗血清を利用し、ゼブラフィッシュのPGCsの分離方法の確立を目指す。
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