2016 Fiscal Year Annual Research Report
複合的物理探査による農業用施設及び地盤中の流体・物質移動の高速可視化技術の開発
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16H02580
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
黒田 清一郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門 施設工学研究領域, 上級研究員 (30343768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 隆行 鳥取大学, 乾燥地研究センター, プロジェクト研究員 (20437536)
森井 俊廣 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30231640)
佐藤 源之 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (40178778)
塩谷 智基 京都大学, 工学研究科, 特定教授 (40443642)
斎藤 広隆 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70447514)
藤巻 晴行 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (90323253)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 物理探査 / 地震波干渉法 / 地中レーダ法 / 弾性波速度 / 浸透流 / 物質移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度として基本的な探査システムの試作と室内実験および現地適用試験に着手した。そのため以下の3項目を実施する。 1)基本計測システムの開発:地盤中の体積含水率や溶存物質の分布を、電磁波計測に基づく誘電率・導電率分布の評価によって推定する基本的な計測システムの開発および試作を行った。システムは計測装置などのハード部分だけではなく、イメージングまで可能となるような波形解析システムも必要となることからこれについても開発に着手した。同様に弾性波探査についても、高い空間分解能を獲得するため音響領域まで周波数を高めた振動計測システムを構築を行うとともに、光ファイバ振動センシングの適用可能性について検討を開始した。 2)高速イメージングのための計測装置の整備および室内試験の準備:2年度以降に行う高速イメージング技術の開発のための計測機器および室内試験のための準備を行った。計測装置については基本的に既存の装置を用いるが、農研機構において電磁波・弾性波探査両方の室内試験ができるよう準備を行った。また計測中に発生する温度依存性を評価できるように多点温度計測の準備を行った。 3)適用試験地における基礎調査:鳥取大乾燥地研・新潟大の圃場および各地の農業用ダム数カ所を野外実験フィールド候補地とし基本的な現地調査を行うとともに、地盤構造および基本的な地盤材料特性について電磁気探査および地震波探査により調査試験を実施した。 以上の研究について、野外および室内において計測制御できる堅牢なPCを導入するとともに、特に電磁波解析技術の開発について釜慶大学の研究者を、地震波干渉法についてコロラドマインズ大の研究者を研究協力者とし、米国地球物理学連合大会(2016年12月)、米国地盤環境工学物理探査学会(SAGEEP)などの学会へ研究成果公表を行い、前後の交流機会を通じて共同研究に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、基本的な探査システムの開発のためその試作を行うとともに、検証のための室内実験および現地適用試験に着手することができ、そのため以下3項目 1)基本計測システムの開発、2)高速イメージングのための計測装置の整備および室内試験の準備、3)適用試験地における基礎調査、について想定通りに進捗することができた。 新潟大との共同研究においては同大学の実験施設および卒業論文として本課題に取り組む学部生の尽力により、キャピラリーバリアとよばれる現象を用いて不均一な浸透流を人工的に発生させその実態を電磁波探査によって評価できる可能性を示すことができた。また鳥取大学との共同研究においては不均一な浸透流を発生させる可能性がある地盤構造の不均一性を新たにNMR法を用いた探査法によって明らかにできる可能性を示すことができた。地震波を用いた探査においては、構造物や地盤における水圧や水分分布の変化によって生じる地震波伝播速度の微小な変化を検出することによって評価できる可能性を示した。 これらの研究成果を農業農村工学会誌、地盤工学会誌において公表するとともに、一部、米国地球惑星物理学連合秋季大会(American Geophysical Union Fall Meeting)、米国地盤環境工学物理探査学会(SAGEEP2017)などの学会へ研究成果公表することができ、欧州地球科学連合大会(European Geoscience Union General Assembly)に発表する予定である。またこれら国際学会の前後等の交流を通じてコロラドマインズ大学、韓国釜慶大学との共同研究を予定通り実施した。 以上のように予定通り研究は進捗し、学会等への公表も予定通り行われていることから、研究課題は順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
多点から時系列的に無相関な送信波形を同時に送信し、受信点間の計測波形に地震波干渉法・電磁波干渉法の概念を適用し、擬似的なインパルス応答を得ることによって高速なトモグラフィ計測を可能にする装置の開発を行う。またその応答に研究代表者らが提案してきた波形解技術を適用することにより、高い空間分解能と感度で地盤中に発生する変化をイメージングする解析システムの開発を行う。これにより農業用施設の構造物内や地盤内に生じる、浸透流や間隙空気の移動といった流体移動現象や、溶存物質の移動現象を高速で可視化する技術の開発を行う。また30年度の実証試験に向けて次の実験調査を行う。 1) 多重受信アンテナシステムの作成とその電磁波計測による不均一な水分分布・浸透流の高速可視化実験 2) 多重同時弾性波送信システムによる振動伝播特性計測による不均一な物性分布の高速可視化実験 3) 野外実証試験地における地盤の不均一構造・物理特性の把握 4) 野外地盤中に挿入可能なボアホールセンサの整備 以上の研究成果を12月米国で開催予定のAmerican Geophysical Unionや国内での物理探査学会学術講演会等で発表を行う。これらの学会発表の前後等に釡慶大学、コロラドマインズ大学、UCバークレー、デルフト工科大学等研究協力者らと、それぞれの専門分野における打ち合わせを行い、共同実験および研究成果算出に向けた検討、協議を行う。
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