2016 Fiscal Year Annual Research Report
Sensory receptor genes regulating odor-induced fearful behaviors
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16H02591
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
小早川 高 関西医科大学, 医学部, 准教授 (60466802)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 野生動物忌避 / 情動 / 先天的恐怖 / 嗅覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
野生動物は天敵やその他の生命を脅かす危険と隣りあわせで生活している。感覚器官で感知した外界の情報が危険であると判断されると恐怖という情動状態が脳に生成し逃避や防衛行動、様々な生理応答が誘発される。草食動物は夜間でも感知できる肉食動物から発生する匂い分子に対して恐怖を感じるとされ、実際に、肉食動物の排泄物に対して草食動物が忌避行動を示すことが知られている。しかし、この忌避行動を担う感覚受容や情報処理メカニズムの多くは未解明であった。 一般に、生理活性を持つ匂い分子は天然成分から同定されてきた。これに対し、私たちは自然物の化学構造を最適化するという新たな方法で、既知の天敵に由来する匂い分子の活性を遥かに上回る先天的な恐怖情動の誘発活性を持つ人工匂い分子「恐怖臭」の開発に成功した(特許第5350496号)。餌の近くに恐怖臭を設置すると少なくとも試験した3日間の間はマウスの摂食行動を完全にブロックできた。 ここで残された問題は、どのような受容体を介して恐怖臭に対する恐怖行動が誘発されるのかという点である。この問題の解明は、恐怖臭の作用機構の分子レベルでの理解に繋がる。また、受容体の活性に基づいた恐怖臭の改良や適応動物種の拡大、ヒトに対する恐怖臭の安全性の証明などにも必須である。さらには、生物学的には感覚入力の意味情報判断メカニズムの解明や、PTSDのように容易に馴れることのできない強力な恐怖情動と感覚入力を結ぶ動物モデルの開発、感覚入力を介したヒトや動物の恐怖情動の緩和技術の開発などに広く応用できる。そこで、本研究では恐怖臭を感知して先天的な恐怖情動を誘発する受容体の同定と機能の証明を目指した研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りフォワードジェネティクススクリーニングで恐怖臭に対するFreezing行動の異常の原因となる遺伝子の同定を行った。一方でゲノムからスクリーニングできた全ての嗅覚受容体に相当する1030種類の嗅覚受容体を網羅する培養細胞での発現スクリーニング系を構築し、恐怖臭に応答する嗅覚受容体のスクリーニングを行った。これらのスクリーニングで同定した受容体の中から、恐怖臭に対するFreezing行動の制御に関与する可能性が高い候補遺伝子に関してノックアウトマウスや受容体遺伝子を標識する遺伝子改変マウスの作成を計画通り行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に準備したノックアウトマウスの行動解析や、c-fosの発現を指標にした全脳活性化マッピング法による神経活動の解析を行う。これらの解析により恐怖臭による行動制御に関与する受容体および脳領域を同定する。また、恐怖臭の行動を制御する候補受容体の匂い応答特異性を培養細胞による再構成系ならびに、標識マウスを用いた自由行動条件でのマウスの脳深部イメージングにより解析する。
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Research Products
(5 results)