2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の病態検査学の確立
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16H02637
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢冨 裕 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60200523)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘパリン起因性血小板減少症 / 機能的HIT抗体検査 / サイトカラシンB |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスモノクローナルPF4/ヘパリン抗体(マウスHIT抗体)を用いて、HIT抗体による細胞活性化機序の解明を行った。洗浄血小板をヘパリンとマウスHIT抗体とで刺激し、血小板凝集能検査計(PRP313M)を用いて血小板凝集反応(PAT)を評価した。マウスHIT抗体により、HITに特徴的なlag timeと濃度依存的な凝集反応を認め、ウエスタンブロットでもHIT抗体がFcγRIIAに作用したときに生じる切断されたFcγRIIA(40kDa→32kDa)のバンドを得た。以上より、マウスHIT抗体を用いたHITのin vitroモデル系を確立した。さらには、本系におけるエイコサノイド解析を行い、12-HETEが有意に高値であるという興味深い結果が得られた。H28年度の繰越資金を用いて、別のアッセイ系であるELISA法を確立させて測定すると、LC-MS/MSとELISAによる測定で差異が生じていることが判明した。現在、この検討を継続中である。 HITの診断において重要となる機能的HIT抗体検査の感度を上げる方法として、サイトカラシンB(CB)で血小板を処理する方法を考案した。臨床検体30症例を用いて、5名の血小板ドナーにCB処理の有無で評価したところ、CB処理なしではドナーにより凝集の有無にばらつきがみられたが、CB処理ありでは全例で凝集を認めた。さらに機能的HIT抗体検査が陰性の症例では、CBで処理しても血小板凝集は誘導されなかった。機能的HIT抗体検査では血小板ドナーの選択は極めて重要であるが、CBを用いることでドナー選択が不要となる可能性が示唆され、この報告を現在、投稿中である。また、H28年度の繰越資金を用いて、ソノクロットの備品を購入し、全血凝固解析も進めている。本研究は東京大学大学院医学系研究・医学部倫理委員会によって承認されている[審査番号: 10324-(3)]。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はHIT抗体による細胞活性化機序の解明と機能的HIT抗体検査の研究の大きく2つからなっている。前者の研究は、マウスHIT抗体を用いて、HITのin vitroモデル系を確立することで、昨年度はHIT抗体による刺激で12-HETEが有意に高いことを示したが、測定系により異なることが判明した。活性脂質解析は継続して検討中である。また、既報では抗PF-4抗体(KKOとRTO)によるin vitroモデルが使用されており、現在、同じ結果が得られるかKKOとRTOを用いて再現性を評価している。 後者の研究も順調に進んでおり、サイトカラシンBを用いてin vitroモデル系での検討は終了し、臨床検体での検討も30例を超えており、有益な結果が得られたため、現在、論文を投稿中である。また、これらの検査の発展させ、ソノクロット装置を用いて全血凝固解析にも着手している。安定した実験系を確立するための基礎検討中である。 ELISA法とソノクロット装置を用いた全血凝固解析はH28年度の繰越資金を用いて開始し、H29年度の資金を用いて、継続的に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスHIT抗体モデルと同様の凝集反応が、既報で使用されているKKO、RTOを用いても再現できるかを検討中である。評価方法は、PRP313Mを用いた血小板凝集能検査および上清中の活性脂質解析(TXB2と12-HETE)、ウエスタンブロットによるFcγRIIAバンドの確認を行う予定である。活性脂質解析も臨床検体を用いて検討を行っている。 CBを用いた機能的HIT抗体検査は、臨床検体を用いて引き続き、症例数を積み重ねていくと同時に、臨床検体中の活性脂質解析も追加で検討を行う。また、ソノクロット装置を用いた全血凝固解析も引き続き行って、臨床検査への応用を模索する。
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Research Products
(4 results)