2017 Fiscal Year Annual Research Report
進行消化器癌に対するα線核種内照射療法による治療戦略の確立
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16H02668
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
絹谷 清剛 金沢大学, 医学系, 教授 (20281024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萱野 大樹 金沢大学, 附属病院, 助教 (10547152)
鷲山 幸信 金沢大学, 保健学系, 助教 (80313675)
小川 数馬 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (30347471)
村山 敏典 金沢大学, 附属病院, 教授 (30378765)
吉村 健一 金沢大学, 附属病院, 特任教授 (30415517)
今井 康人 金沢大学, 附属病院, 特任教授 (60720878)
栗林 義和 金沢大学, 附属病院, 特任教授 (40756186)
織内 昇 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40292586)
伊藤 浩 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20360357)
富永 英之 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00393348)
久保 均 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00325292)
稲野 彰洋 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (30437933)
若林 大志 金沢大学, 附属病院, 助教 (60622818)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | α線 / 核医学治療 / 放射線管理 / 標識合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
サイクロトロンにより生成された211Atによる標識体の合成を試みた。しかし、タンパク質やペプチドのチロシン残基への211At標識は、放射性ヨウ素標識と同様には反応が進行しなかった。ペプチドの新規211At標識法の確立を目的として、腫瘍新生血管に過剰発現していることが知られているαVβ3インテグリンに高親和性を示す環状RGDペプチドをモデルペプチドとして用い、211At標識ペプチドの合成、評価を行った。211At-c(RGDfK)を放射化学的収率63%、放射化学的純度96%以上で合成した。125I-c(RGDfK)および211At-c(RGDfK)は、腫瘍組織に高く集積し、両標識化合物は類似した体内分布を示した。集積はαVβ3インテグリン特異的であることが示唆された。 内照射療法実施に際して、体内線量推定の把握が、その効果予測・安全性確保のために重要である。α線の線量推定を現在臨床で使用されている223Raをモデルとして行った。 実際に211Atを広く応用するに当たっては、標識体合成術者、治療時医療従事者の放射線防護 放射線管理上非常に重要である。211Atは他のハロゲンと同様に飛散性に注意が必要である。市販のα線用シンチレーションサーベイメーターおよびβ・γ用のGM管式サーベイメーターを用い、α線検出実証実験を行った。いずれの装置でも、10-20mmまで近接して測定する必要があることがわかった。また、動物実験に際して研究環境の汚染を評価した。術者の防護衣類などを汚染させた形跡は確認できなかった。一方、実験動物のケージ汚染には傾向が存在した。これらのことから、211Atの汚染は対象によりかなり影響を受けるであろうということが示唆された。実際に臨床に移行するに際して、環境や使用素材などとの関係を明らかにした上で,それらに対処できる実験計画・実験環境の構築が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、サイクロトロンMP-30(α:32 MeV)を使用して209Bi(α, 2n)211At反応で211Atの製造が可能であること、211Atの製造に有利な垂直照射機構に合わせてターゲットの性状や容器の検討を行った。また、最適化した条件において副核生成物である210Atの混入がないことを確認した。生成に関しては、繰り返し行うことにより再現性を確認した。 211Atの標識反応は、同じハロゲン属である放射性ヨウ素とは異なることが判明し、方向修正が必要であった。標識体として新たに腫瘍内新生血管をターゲットとしてαVβ3インテグリンに高親和性を示す環状RGDペプチドをモデルペプチドとし、その標識が可能であかつ十分な標識体が得られることを確認するとともに、担癌動物で腫瘍集積性の面で有望な標識体を同定した。さらに、腫瘍への集積特異性も確認された。 実際の治療においては、患者における線量分布の把握が重要である。現在実際に臨床応用されている223Raをα線線量推定のモデルとして応用し、投与された患者でデータ収集を行い、体内線量評価を行った。将来の211At治療における基礎データとすることができた。 さらに、治療実施に際しては、標識・投与・患者管理において術者・医療従事者の放射線管理が非常に重要である。これまでにその適切な運用のための基礎情報が得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初目標であった211At生成を、研究計画に乗っ取って使用可能な数量と精度で行うことが可能となった。数量的には、将来臨床応用ができるレベルに近いところまで達成できている。標識対象としては、モデルとしてペプチドを用いて基礎検討を行ったが、このペプチドのα標識体の方向性が決定された。今後、ペプチドをターゲット分子として主に検討を行う予定である。当初目的であったモノクローナル抗体による評価は引き続き行うこととする。これらの大きさ・腫瘍集積機序の異なるターゲット分子の組み合わせによる治療も想定される。 211At標識抗体、ペプチドの品質評価、試験管内における殺細胞効果、実験動物における体内動態観察を行う。放射標識体合成はリジン残基εアミノ基への211At標識化合物の導入により行う。ペプチド標識は前年度の検討で得られた対象で標識を行う。標識体の腫瘍細胞結合能、親和性、安定性の評価を行う。皮下担癌モデル、肝転移モデル、腹腔内播種モデルにおいて、経時的な体内分布/動態を把握する。撮像可能性探索を、壊変に伴う娘核種の放出するγ線や電子捕獲で生じる特性X線などによる撮像で行う。小動物用SPECT/CT装置と核種溶液を用いて検証し、さらに実験動物での撮像を試みる。将来の臨床展開のために、治療用放射性医薬品のレギュラトリーサイエンスに関わる情報収集を臨床研究マネージメントの観点で開始する。
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