2018 Fiscal Year Annual Research Report
近年の温暖化によるケニア山の氷河縮小と水環境の変化が地域社会に及ぼす影響の解明
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16H02714
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水野 一晴 京都大学, 文学研究科, 教授 (10293929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森島 済 日本大学, 文理学部, 教授 (10239650)
手代木 功基 摂南大学, 外国語学部, 講師 (10635080)
孫 暁剛 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任准教授 (20402753)
奈良間 千之 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50462205)
荒木 美奈子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (60303880)
小坂 康之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70444487)
山縣 耕太郎 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80239855)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 温暖化 / 氷河縮小 / 水環境 / 植生遷移 / 農業 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
衛星データによる降水量データ(CHIRPS及びGPCP)と現地観測雨量データを比較し、近年の降水量変動の特徴を明らかにした。ケニア山周辺の年降水量は、一定の傾向を示すものではないが、一方その季節配分が変化し、3-5月に減少、10-12月に増加していることが明らかとなった。 2018年8月に小型セスナ機からデジタルカメラでケニア山の氷河の空撮をおこない、SfM(Structure from Motion)の手法を用いて、氷河の地形表層モデル(DSM)を作成した。解析の結果、現在の氷河は7つであることがわかった。1893年の氷河末端位置とヤンガードリアス期のモレーンの間に複数のモレーンを確認した。地衣編年法からルイス期のモレーンは19世紀前半から後半にかけて形成された小氷期のモレーンと推察された。 ケニア山の雨季の標高2,000m-4,500mにおける降水、河川水、氷河融解水、積雪を採水・分析を行い、降水サンプルの酸素同位体比から、乾季とは異なる明瞭な高度効果が確認された。乾季の河川水の涵養標高は4,650mであるのに対し、雨季は3,224mであり、季節間の違いが認められた。 氷河後退域におけるSenecio keniodendronとLobelia telekiiの分布と生存・枯死の動態を明らかにした。Lobelia telekiiの生長量はロゼット葉の高さが約20㎝以上になると、花序を伸長させることが明らかになった。また2種の分布と環境要因との関係を検討した結果、日射量が分布と関係していることが示唆された。 ケニア山の水環境の変化に対する地域住民の対応について調査を行なった。乾季の水不足に対処するために、山麓の上部と中腹では水利用プロジェクトによる河川水の取水管理を通して水争いを避けていた。農民は各自の農地面積と供給水量を考量して、天水と灌漑に分けて耕作地を区画していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年8月に本研究プロジェクトの7名がケニア山に入り、山頂から山麓にかけての水サンプルの採水や、氷河分布や氷河周辺の地形、土壌発達、気象、植物遷移の現地調査が行われた。また、セスナをチャーターして空撮データより氷河の地形表層モデルを作成して、氷河変動を検討した。山麓では地域住民による水の利用や農業について聞き取り調査が行われた。 3名の研究成果が2018年5月のアフリカ学会(北海道大学)にて、2名の研究成果が2018年9月の日本地理学会秋季大会(和歌山大学)、3名の研究成果が2019年3月の日本地理学会春季大会(専修大学)、1名の成果が2018年10月の日本山の科学会秋季研究大会(信州大学)、3名の研究成果が2018年5月の地球惑星科学連合 JpGU-AGJ Joint Meeting 2018(幕張メッセ)の 「山岳地域の自然環境変動」のセッションにて発表された。また、学術雑誌に論文が3本、著書に論文が1本掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も地形、土壌、植生、水文、住民生活、地域社会の観点から調査を行い、近年の氷河縮小が地域社会にもたらす影響について明らかにしていく。2018年に設置した気象観測機のデータを回収して気象条件を分析する。2018年8月の調査では、積雪があったため、氷河の質量分析や植生遷移で一部正確なデータが得られなかったため、再度正確なデータが得られるように詳細な調査を行う。また、これまでの研究成果をまとめ、英文の論文集を出版する。
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Research Products
(16 results)