2018 Fiscal Year Annual Research Report
Sewage database and mass balance development of sewerage and drainage system in Asian cities
Project/Area Number |
16H02748
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 滋穂 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (10135535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 英典 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (40512835)
田中 周平 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00378811)
酒井 彰 流通科学大学, 経済学部, 教授 (20299126)
蛯江 美孝 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (90391078)
河井 紘輔 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (10531501)
シバコティ ビナヤ 公益財団法人地球環境戦略研究機関, その他部局等, 主任研究員 (60599075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 下排水 / 物質収支 / アジア / 下水処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,下水処理場の計画・設計に利用可能なデータ密度・精度を備えた下水性状の基盤データの整備を目的とし,3つの課題に取り組む。本年度は,課題1)「概ね6都市における地域特性に応じた下排水系の類型化」に関して,ハノイ,フエ,クルナ,マンダレー,バンコク郊外,およびプノンペン郊外を対象とし,情報収集をし,一部水利用過程も含めた下排水系ストリームを暫定的に作成した。特に,複雑な水利用・排出が見られたハノイ郊外,バンコク郊外およびプノンペン郊外について比較を行い,水利用・下排水排出の多様さを明らかにした。課題2)「下水流量・水質データを集積,下水性状の固有性,共通性および変動幅を検討」に関して,腐敗槽流入水の性状調査方法,腐敗槽での処理効率の推定方法の検討を行うとともに,フエ,ハノイ,ダナンにて生活排水の実態調査を行った。フエでのデータを活用し,リサンプリング解析手法により,水量・水質の時間変動特性を明らかにした。合わせて二次データの収集も進め,都市・家庭ごとのトイレ汚水・雑排水の発生時性状の差異の特性を明らかにした。課題3)「水・炭素・窒素・リンの物質収支モデルを構築し下水性状の形成要因を解明,下水性状基盤データベースを構築」に関して,トレーサー試験および連続流量観測を活用した水収支構築方法を考案した。フエにて下排水系の水・炭素・窒素・リンの物質収支を構築し,特に乾季における浸出水,雨季における浸入水が下水量・性状に与える影響が大きいことを明らかにした。さらに,マンダレーでも都市排水・下水を合わせた物質収支を構築した。これらに合わせて,都市廃棄物が都市下水路にあたえる影響を将来的に検討する材料として,ホーチミン市(ベトナム)において区ごとの都市廃棄物発生原単位を被説明変数とした場合の説明変数となるデータの収集を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目標は,課題1に関しては,「昨年度までに実施した5都市での下排水系の整理に加え,さらに1都市での下排水系の整理を進める」,課題2)に関しては,「昨年度までに集積した1都市でのデータを活用した時間変動も考慮した物質収支解析および水量・水質の変動特性解析を継続するとともに,新たに1都市にて腐敗槽に着目した水量・水質データの集積を進める」,課題3)に関しては,「これまでデータを集積した2都市にて,下排水系の物質収支モデルの構築を進める。」であった。本年度の成果として,課題1に関しては,すでに目標としていた概ね6都市における下排水系の整理を終えて,順調に進展したと言える。課題2に関しては,フエでの時間変動も考慮した水量・水質の変動特性を明らかにするとともに,ハノイにおいて腐敗槽に着目した水量・水質データの集積を行い,順調に進展した。さらに,ダナンでの下水性状データ,その他の都市の単位排水性状の2次データも収集し,予定以上の成果も得た。課題3に関しては,マンダレーにて炭素・窒素・リンの,フエにて水・炭素・窒素・リンの物質収支モデルを構築した。マンダレーについては査読論文として出版済み,フエについても現在投稿中であり,順調に進展した。マンダレーの物質収支については,当初の目標であった生活排水を主体とした下排水系にとどまらず,廃棄物も含めて農業系,工業系も含めた物質収支を構築し,当初目標以上の成果を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,下水処理場の計画・設計に利用可能なデータ密度・精度を備えた下水性状の基盤データの整備を目的とする。具体的には以下の3つの課題を目標とする。1)社会状況が異なる概ね6都市において,地域特性に応じた下排水系の類型化を行う。2)各類型ごとに典型的な地区にて,下水流量・水質データを集積する。下水性状の特性比較を下排水類型ごとに行うことで,下排水系特性による下水性状の固有性と共通性,変動幅を明らかにする。3)3地区程度にて,水,炭素,窒素およびリンの物質収支モデルを構築することで,下水性状の形成要因を明らかにする。得られたデータはWeb等で公開することで,アジア都市の下水性状基盤データベースを構築する。以て,適切な処理場の計画・設計,アジア都市の性状特性に適合した処理技術の開発に貢献する。今後は,課題1)に関しては,これまでに収集した都市の下排水系の情報を整理し,類型としてまとめる。課題2)に関しては,これまでに集積したデータを活用し,さらに新たな下水流量・水質データを蓄積することで,時間変動・季節変動の特性解析のみならず,収集データの精度とサンプリング頻度設計との関係を考察し,データのばらつきを考慮した下水性状の比較・整理を行う。さらに,求める精度に応じたサンプリング頻度設計についての提言を行う。課題3)に関しては,3都市にて,下排水系の物質収支モデルを構築する。内1都市を対象に,物質収支モデルに基づいた下水の量・質の将来予測を行い,その方法論を提案する。これらで得られた下水性状データを活用し,アジア都市の下水性状基盤データベースを構築する。
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Research Products
(22 results)