2019 Fiscal Year Annual Research Report
耐塩性蒸散促進樹種と耕作放棄農地を利用した塩害・湛水害対策用の植林システムの構築
Project/Area Number |
16H02764
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
江頭 靖幸 東京工科大学, 工学部, 教授 (70223633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 裕司 工学院大学, 先進工学部, 准教授 (40361513)
高橋 伸英 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (40377651)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 耐塩性樹種 / 塩害対策植林 / 湛水害対策植林 / 蒸散速 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は西オーストラリアでの森林伐採に起因する地下水アンバランスが原因となった塩害・湛水害への対策を念頭に、塩害・湛水害の生じた農場内の耕作放棄農地への耐塩性蒸散促進樹種の植林を提案するものである。Eucalyptus sargentii など耐塩性と高い蒸散能力を併せ持つ樹種を見いだしており、それらの塩害・湛水害条件下での生理特性の定量評価を実施し、普及・一般化可能な対策植林システム設計を目指し、7つの実験・研究項目を設定している。 2019年度までに研究全体の基礎となる項目1(「1: 実際の塩害・湛水害による耕作放棄農地を用いた追加検討候補樹種のスクリーニング試験」)と項目4(「4: 塩害・湛水害による耕作放棄農地の環境条件類型化」)のために設定した新規の区画に、Eucalyptus sargentii、Eucalyptus occidentalis、Casuarina obesa の苗木を植林したサイトを設置した。植林サイトは塩害・湛水害の影響を受けている地区に設定している。区画内の土壌塩分濃度の分布を測定してマッピングし、植林後2~3年間を経てそれぞれの樹種の初期成長と塩分濃度との関係を継続的に観察している。 また、項目2(「2: スクリーニングされた樹種の成長速度と蒸散量の密度・塩濃度依存性の定量評価」)、のGranier センサー(樹液流センサー)のWickepinの既存植林実験区画内での設置については、Eucalyptus sargentii、Eucalyptus occidentalis の植林地にセンサーを設置した。 新規の植林区画とその周囲には新たに地下水位測定用の穴を掘削し、既存の測定孔と併せて地下水位の分布と変動を観測し、さらに追加の土壌サンプリングを実施して項目4 の分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心的な実験課題である「1: 実際の塩害・湛水害による耕作放棄農地を用いた追加検討候補樹種のスクリーニング試験」のため、初年度に2カ所の植林サイトを設定した。いずれもクリーク沿いの塩害・湛水害による耕作放棄地であり、一つは既存の植林実験区画に近接したサイト(32°43'17.15"S、117°39'57.26"E)で、もう一つは植林された場所から独立したサイト(32°39'23.18"S、117°42'6.97"E)である。「独立サイト」は300m×150m程度のサイズで、「近接サイト」はその約10分の1の規模である。2017年度には「独立サイト」への植林を実施し、やや遅れて2018年度には「近接サイト」への植林を完了することができた。 植林した苗は両サイトともに大きな問題もなく成長している。2018年度、2019年度にかけて生存率の調査を実施したが。現地調査委に際して想定外に気温が高い日が多くなったことを受けて、「独立サイト」には毎木調査の際の位置決めを補助するワイヤーを設置した。 また、項目2(「2: スクリーニングされた樹種の成長速度と蒸散量の密度・塩濃度依存性の定量評価」)のためのWickepinの既存植林実験区画内でのGranier センサー(樹液流センサー)の設置については、2017年度から順次設置を進めてきた。長期間の継続した測定となるため、当初、センサーの故障、データ記録システムの不調、野生動物(鼠やオウムなど)によるケーブルの損傷などの問題があり、特に秋から冬(3月~9月)の時期のデータの取得が困難であることが判明した。自作のGranier センサーの改良、記録システムの設置方法の見直し、赤い色のケーブルを使用しないといった工夫、等によって大きな改善が見られた。 以上をもって、計画全体はおおむね順調に推移していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である2020年度においては2回の豪州への渡航を計画している。 塩害・湛水害の生じている土地に設定した「独立サイト」「近接サイト」の両サイトでの樹種・植林密度毎の生存率と成長状況の観測を年でデータを収集し、随時解析し適宜発表する予定である。土壌の塩分、地下水の塩分、土壌水分と地下水位との関係をベースに項目4の土地条件の類型化をすすめる。 項目2のおける樹液流測定に際して使用するGranier センサーについては、センサー製造手法、現地における設置の手順が顕著に改善したため、目標とするセンサーを全て設置することができた。今後はデータの収集と解析、既設センサーのメインテナンスを継続して良質のデータを得て、別途対象地周辺の気象局で収集されている気象データと統合し、耕作放棄地の塩害強度ごとに最適な植林樹種・植林密度での蒸散量を、実際の気象条件下で数値シミュレートし、現実に近い形で明確化する。 実験項目1~4 で得られた結果を基に実験項目5~7 のシミュレーションや解析を実施する。研究成果を適宜論文等で発表し、シンポジウムを開催するなど、成果の迅速な公開に努める。 なお、2019年度末からの新型コロナウイルスの感染拡大による豪州への渡航の可否、植林地の土地オーナーとの交渉次第によっては渡航計画を延期する予定である。
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Research Products
(2 results)