2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H02775
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山城 哲 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00244335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 真 国立感染症研究所, 副所長, 副所長 (10233214)
村瀬 敏之 鳥取大学, 農学部, 教授 (20229983)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 下痢症 / 臨床疫学研究 / 下痢原性微生物 / 北部ベトナム / 下痢原性細菌 / ロタウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナム北部ナムディン省地区における下痢サンプルの病原体検出がほぼ完了した。非下痢性糞便サンプル479検体(登録者479人)、下痢性糞便サンプル2120検体(登録者1509人)の解析の結果、下痢原性微生物の検出率は、下痢性糞便サンプルの方が非下痢性糞便サンプルより、13.1%対8.4%と、高い値を示した。病原微生物の検出率としては、ロタウイルスは約2%であり、ノロウイルスに関しては、G1が0.4%、G2が4.4%であった。下痢起炎微生物のなかで、赤痢アメーバによる割合が比較的高く、全体の3.2%を占めた。赤痢アメーバは、北部ベトナムにおいて、小児から成人にわたる幅広い年齢層で下痢の起炎微生物であることが推定された。また、サルモネラ、エロモナス、カンピロバクター、赤痢菌、コレラ菌は全体を通じて検出が少なく、同地域においては主要な下痢起炎微生物とは言えない事が推定された。ナムディン省における全年齢層を対象としたコホート調査において、下痢の発生状況と環境要因の関連を解析した。その中で有意な関連があったのは水の使用状況および使用するトイレの種類などであった。水の使用状況として、飲料水を含まない生活用水(一般生活用水)と、飲料水とに分けて調査を行った。この地域における一般生活用水と飲料水の水源として主に雨水と水道水があるが、一般生活用水および飲料水双方において、水道水を使用する群が、雨水を使用する群に比べて下痢の発生頻度が高い傾向がみられた。また、この地域におけるトイレの種類は主に、簡易式水洗トイレと溜め込み式トイレがあったが、簡易式水洗トイレを使用する世帯群が、溜め込み式トイレを使用する世帯群に比べて下痢の発生頻度が低い傾向が確認された。これまでのところ、家畜の保有状況と下痢症発生頻度との間には有意な関連は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
北部ベトナムより採取したヒト由来の下痢便検体およびコントロールとして採取した非下痢便検体より、下痢原性微生物の検出をほぼ完了し、同地区における下痢症の発生頻度、および下痢症の危険因子の推定のための解析も順調に推移している。しかしながら、研究実施地区の一つである南部ベトナムテンザン省ソンビン村でのヒトからの下痢症検体、および同地区で飼育されている家畜由来の便検体の収集がやや遅れ気味であった。また、下痢原性微生物の検出のための消耗品の現地での調達がやや遅れ気味となった。同地区において、研究補助員のトレーニングおよび村公衆衛生担当機関との研究推進のための協議を重ねており、地域住民および家畜の糞便検体の収集は問題なく進められる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、やや遅れ気味であった、南部ベトナムテンザン省ソンビン村において、対象住民の平時における便を収集し、いわゆる下痢原性微生物の検出を試みる。また下痢症検体を前向きに採取し、そこから同微生物の検出を試み、病原微生物の分布を平時におけるものと比較する。下痢症の危険因子推定のために、疫学調査を実施する。また、同地区で飼育されている家畜の便より同様に微生物群の検出を試みて、家畜とヒトの間で下痢症起炎微生物の伝播の有無を解析する。以上を、ホーチミンパスツール研究所との共同で実施する。得られたデータをベトナムの他の地域ので得られた検体を基に解析したデータと比較する。解析したデータを随時学会や論文等で発表する。
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Research Products
(7 results)