2017 Fiscal Year Annual Research Report
入力データが不完全なアルゴリズムで重要となる乱化技術の研究
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16H02782
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩間 一雄 京都大学, 数理解析研究所, 研究員 (50131272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 修一 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00303884)
玉置 卓 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40432413)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アルゴリズムの設計と解析 / 計算量理論 / 乱択アルゴリズム / 平均計算量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は以下の5つの具体的テーマに関して,乱択アルゴリズム及び平均時間アルゴリズムの設計と解析を行うことである. (1)グラフの性質検査アルゴリズムに対する枝サンプルの重要性,(2)kサーバ問題での比較的小さなkの値に対する乱拓アルゴリズム,(3)オラクル列の再現問題にたいする乱択アルゴリズム,(4)安定マッチングや関連するアルゴリズム的ゲーム理論における様々なタイプの不完全情報の解析と克服.(5)ソーティング等における平均的計算量の解析のための乱拓技術 29年度に関しては,特に(1),(3),(5)に関して一定の成果を得る事ができ,論文の発表と投稿を行う事が出来た.ソーティングの比較計算量の平均時間解析を行い,従来の上限をやく25%改良することに成功した.アイデアは,従来のソートされた列に1個づつ新しいアイテムを挿入するアルゴリズムに対して,2個同時に挿入するアルゴリズムの解析に成功したことである.解析は1個挿入の場合に比べて格段に困難である. オラクル列の再現問題に関しても,任意に列に対して高い確率で最適な質問数で答えを得るアルゴリズムを開発することに成功した.入力の列が平均的な場合は簡単であるが,そうで無い場合に列の特徴を利用することが必要であり,部分列の繰り返し構造という特色に着目して困難を乗り越えることができた.また,平均的な列では比較的容易であるところに着目して,平均質問回数が最適に対して6以内の増加にとどまる極めて最適に近いアルゴリズムを開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の成果に対して,(1)に関しては分野でトップに位置づけられる米国ACM学会のトランザクションに論文を発表することができた.更に関連の木状の関数計算問題の下限に関しても同誌に投稿誌改訂の作業中である. (3)に関しては,欧州アルゴリズム会議(この分野のトップ会議の一つである)に投稿して現在審査中である. (5)に関しても,アルゴリズムに関する一流の会議に採録され,更には伝統のある雑誌であるTheoretical Computer Scienceから招待を受け,現在原稿を作成中である.なお,このテーマに関しては得られた結果の最敵性に関しても研究を進めている.現在鋭意進行中ではあるが,とりあえず,2個同時挿入というテックニックを3個以上同時挿入に拡張しても大きな改善が望めいないことを計算機実験も併用して示すことに成功し,Springerから出版される本の1章を構成することが決まっている. 学会への論文発表だけでなく,招待講演等の活動も行った.例えば(3)と(5)については,計算量のギャップが小さくなっているなかでのギャップの解消という統一的視点から説明でき,シアトルのマイクロソフト研究所で招待講演を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
(4)と(5)に関して研究を進める予定である. (4)に関しては斯界最大の問題である3次元案的結婚問題の解の存在性に取り組んでいる.本問題は40年以上前に大御所であるクヌース博士によって提唱され,多くの研究者が挑んだが解決に至っていない.最悪ケースはかなり困難が予想される.そこで本研究のテーマである,平均の場合を考えればその解決は最悪の場合に比べて容易になるのではないかと思われる.現在まで平均的例題を生成して,解決のヒントになるような性質の解明に勤めている.ある種のアルゴリズムが多くの平均的な例題に対しては停止することを証明する方向が見えてきた. (5)に関しては,依然として存在する下限との間のギャップを小さくするようなアルゴリズムの開発の余地は多いにある.しかし,その様な上限の改良よりも格段に重要なのは下限の改良である.現在の下限は情報理論的下限であって,いわば自明な下限である.いかなる(多項式時間)アルゴリズムでもそのような下限は達成できないと多くの研究者が信じており,少しでも改良できれば重要な結果になる.方針としては,出来るだけ一般性の高いアルゴリズムを考えて,とりあえずはその範囲のアルゴリズムではこおまでしか達成できないという感じで攻めていくことだと思う.
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