2018 Fiscal Year Annual Research Report
Individual differences and functions of nostalgia: Cognitive-neural approach and their applications
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16H02837
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠見 孝 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70195444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 憲 北九州市立大学, 大学院マネジメント研究科, 教授 (10422916)
葛谷 聡 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30422950)
米田 英嗣 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (50711595)
高橋 英彦 東京医科歯科大学, 医学研究科, 教授 (60415429)
杉森 絵里子 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (70709584)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 記憶 / 感情 / ノスタルジア / 認知症 / 単純接触効果 / 加齢 / 自伝的記憶 / 回想法 |
Outline of Annual Research Achievements |
なつかしさの機能の個人差に関して、その認知的、神経科学的基盤を解明し、回想法などの応用に役立てるために、3班に分かれて研究を進めた。 認知心理学班では、なつかしさの機能の個人差の認知的基盤を解明するための研究を進めた。主な成果として、第1に、市民の3時点パネルデータを用いて、なつかしさのポジティブ傾向とネガティブ傾向が、次時点の幸福観をそれぞれ上昇、下降させることを明らかにした。また、幸福観は次時点のなつかしさのネガティブ傾向を低下させた。第2に、ペアでなつかしい話を共有することの効果を、なつかしさ傾向の高群同士、低群同士、高-低群の3種類の大学生ペアによって検討した。その結果、なつかしさ傾向高群同士で共有することにより、うつ傾向が大幅に改善した。また、なつかしさ傾向が同様のペアは他のペアより、相手への印象が良かった。第3に、単純接触効果にパワー操作が及ぼす影響への一般勢力感の個人差を検討し、低パワー操作群はなつかしさ感情の関与により勢力感の高低に関わらず刺激集中呈示による単純接触効果が1週間後も維持された。勢力感の高い高パワー操作群は なつかしさ感情の関与は見られなかった。 神経科学班では、なつかしさの機能の個人差の神経基盤を解明するための基礎研究を行った。第1に、なつかしさを感じやすい人ほど、アレキシサイミア傾向が高い人ほど物語理解における時空間課題の成績が高かった。第2に、なつかしさ惹起写真とニュートラル写真を用いたfMRI課題を作成した。さらに、なつかしさを感じた時と、単純に快や不快を感じた時の脳神経活動の差異を検討するために、快や不快を惹起するfMRI課題も作成し、健常者を対象にfMRI データを収集した。 精神医学班では、早期アルツハイマー病の患者に対する回想法の効果に影響する要因と神経基盤を解明するために、実験課題の策定を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にしたがって、3つの班に分かれて研究を進め、全体会議、研究会において分担研究者間の相互の情報交換をおこなった。 認知心理学班と神経科学班では、高齢者を含む大規模調査、大学生を対象とした複数の実験をおこない、なつかしさの機能の個人差に関して、その認知的基盤の解明を進めた。その成果の一部は、日本心理学会大会(1件は優秀発表賞受賞)、日本認知心理学会大会、日本発達心理学会大会などで発表した。また、国内外の学術雑誌に論文が掲載され、さらなる投稿を準備している。 神経科学班では、なつかしさの機能の個人差の神経基盤を解明するために、予備実験によって、fMRI刺激を作成し、健常者を対象にfMRI データを収集した。 さらに、精神医学班では、早期アルツハイマー病(MCI、軽度認知症)の患者をフォローしつつ、実験課題の準備をおこない、4年目以降の研究の展開のための土台を構築した。 以上の通り研究はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、(a)なつかしさのもつポジティブ-ネガティブな機能の個人差に関して、その記憶-感情過程の認知的、神経科学的基盤を解明し、(b)軽度認知症の高齢者に対するなつかしさを用いた回想法における効果的要因を検討するために、3つの研究班が、相互の連絡を密におこないながら研究を推進する。 認知心理学班では、第1に、なつかしさの機能と個人差、加齢の影響を明らかにするために、個人のなつかしさ傾向(ポジティブとネガティブ)と性格特性が、記憶想起経験(回想、デジャビュなど)、時間的展望や幸福観などに及ぼす効果を、大規模な継続調査によって検討する。第2に、高齢者同士で、なつかしい記憶を想起・共有することが、想起した記憶に対する印象やうつ傾向、時間的展望などに及ぼす効果について、記憶共有の有無の2条件を設定して比較検討する。第3に、音楽によって喚起されたなつかしさあるいは新奇性が、商品選択時のリスク認知に及ぼす影響について、商品価格と選択肢数を操作して検討する。 神経科学班では、第1に、時空間物語の読解において、事前に自伝的記憶または展望的記憶を想起することが、質問紙で測定されるなつかしさ傾向性と順行/逆行の物語における読解課題の成績に影響を及ぼすことを実験的に検討する。第2に、なつかしさ感情が引き起こすポジティブな効果(例:向社会行動促進、レジリエンス向上)とネガティブな効果(例:後悔や感傷生起)の個人差の背景となる神経基盤についてfMRIを用いて明らかにする。 精神医学班では、髄液バイオマーカーで確認し得た早期アルツハイマー病(MCI、軽度認知症)の患者におけるなつかしさを利用した回想法の効果に影響する要因と神経基盤を解明するために必要な神経心理検査や実験課題、回想法のプロセスの検討をさらに進める。
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Research Products
(19 results)