2016 Fiscal Year Annual Research Report
釣竿効果の探求とマルチモーダル・インタラクティブ・タブレットへの応用
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16H02855
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
熊澤 逸夫 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70186469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 誠 首都大学東京, システムデザイン研究科, 客員教授 (50114872)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 触覚 / ハプティック / ユーザーインターフェイス / 触覚情報提示 / マルチモーダル・ユーザーインターフェイス |
Outline of Annual Research Achievements |
釣竿効果について心理学的実験を行い、動的な特性に関連した以下の要因について、触覚刺激の明瞭化に対する効果を評価し、触覚情報提示デバイスの設計に必要な知覚特性を収集した。 (1)指のどこにどのような方法で力を加えると釣竿効果は顕著に生じるか? (2)刺激提示部を指でつまむ等で保持するときには、釣竿効果を感じやすい持ち方があるか? (3)静的で変化しない力は感じなくなってしまうので、力を時間的に変化させる必要があるが、釣竿効果を最も強く生じる力の変化の速さや周期、力の変化幅はあるか? (4)力は「竿」に相当する弾性のある樹脂板やゴム膜等を介在して指に伝えるが、釣竿効果を最も強く生じる「竿相当部材」の長さ、広さ、弾性係数、ヤング率はあるか? (5)前述したように指の皮膚の変形量や筋肉の伸縮量が力の知覚に関わるが、釣竿効果には皮膚の変形の仕方や筋肉の伸縮がどのように(どのような割合で)影響を及ぼすか? (6)上記の結果に個人差や体のコンディションによる違いがあるか? こうした心理学的要因に加えて、ニュートン力学の範囲で説明できる物理学的効果について、以下の要因が釣竿効果にどのように影響するか実験的に検討した。 (1)釣竿がしなった際に蓄えられる「弾性エネルギー」が相乗的に作用して力を増強する。 (2)釣竿は長い「テコ」として機能して、先端に働く力が弱くても長い竿を用いると「力のモーメント」が大きくなるため、竿の根元近くを握る手に強い力が作用する。 (3)釣り上げる際に「加速度」が必要なため、加速度を生じるための力が相乗して働く。(4)釣竿の振動が「共鳴」して振れが大きくなることを強い力として感じる。 以上の物理学的要因で触覚刺激の増強に有効なものを、触覚情報提示装置の中で利用するようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した各種の心理実験を順調に終え、釣り竿効果によって触覚刺激を明瞭化した触覚情報提示装置を試作するのための基礎データが次のように得られた。またこの基礎データに基づき各種装置の試作に着手した。試作した装置を使って、釣り竿効果の検証を進めており、その評価結果に基づき試作装置を29年度に改良して行ける目途が立った。 (1)釣り竿のしなりによって弾性エネルギーが蓄積され、それが触覚刺激を増強していることが明らかになった。そこで弾性エネルギーにエネルギーを蓄積してそれを開放することによって触覚刺激を増強する機構を持った触覚刺激提示装置を試作した。またこの成果を国際会議VR2017で発表した。(2)釣り竿を動かす運動に対して遅延なく触覚フィードバックが加わることが重要であることが明らかになった。そこで素早い指の運動を遅延なく計測するための独自のセンサを開発した。心理学実験により遅延を10ミリ秒以下に抑えることが重要であることが分かったが通常のカメラで指の運動を撮影すると最短でも遅延は30ミリ秒生じてしまう。高速カメラを使えば遅延は短くできるが、コストがかかり、また強い照明光が必要になる。そこでコストが低く、暗い照明下でも高速に手指の運動を計測できるマウスのセンサを使用した独自の指運動計測装置を製作し、その効果を確認した。この成果についてもVR2017で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に製作した試作装置を実験的に評価しながら釣り竿効果を確認して、触覚刺激の明瞭化を高めるように改善する。まず刺激橋を高めるようにアクチュエータを強化する予定である。平成28年度に製作した装置は指先に装着できるように小型化と軽量化を重視していたが、電磁力で指先に力を加える際に用いたコイルの巻き数が少なく、生成できる力が弱かったため、それを弾性エネルギーに蓄積して釣り竿効果で増強しても、触覚刺激の明瞭度に限界があった。平成29年度には、小型化と軽量化を犠牲にしても、コイルの巻き数を増やし、弾性も強めて触覚刺激を明瞭化することを目指す。また指先に刺激を与えるだけではなく、体全体を揺り動かして刺激する装置を、釣り竿効果を応用して、低消費電力、小型軽量に実現することを目指す。近年ヘッドマウントディスプレイを被り、体全体で仮想世界を体験するバーチャルリアリティ装置が急速に普及しているので、そのような装置と連動できるように体全体を揺り動かせる装置と制御のためのプログラムを開発する予定である。
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Research Products
(3 results)