2017 Fiscal Year Annual Research Report
摩擦を有する系にみられるスティック・スリップ状態とスリップ状態の境界を考える
Project/Area Number |
16H02876
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
高坂 拓司 大分大学, 理工学部, 准教授 (80320034)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
麻原 寛之 岡山理科大学, 工学部, 講師 (50709615)
軽部 周 大分工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70370054)
稲葉 直彦 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員(客員研究員) (90213123)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | スティック・スリップ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画・方法を念頭に、以下の研究を行った: (1) 摩擦を伴う非自律系に対する解析手法の確立及び状態遷移メカニズムの解明: (a)摩擦を伴う非自律系に観測されるスティック・スリップ状態の不規則状態を調査した。その結果、本系はLasota-Yorkeの定理を満たす、つまり可観測カオスが存在することを示した。また、この成果を原著論文としてまとめた。また、乾燥摩擦を伴う2次元非自律系と同じアナロジーを有する電気回路系を示し、分岐解析を進めた。 (b)昨年度の成果よりスティック・スリップ状態のカオスからスリップ状態へと遷移する分岐が2種類あることはわかっていたが、そのうち一種類の遷移メカニズムが不明であった。そこで調査を行なった結果、カオスが不変区間にとどまることができず大域的分岐によってスリップ状態へと遷移することが明らかになった。 (2) 微小な高調波強制振動の印加(微小高調波印加)を用いた状態遷移の制御: 微小高調波を印加した乾燥摩擦を伴う2次元非自律系を構築し、スティック・スリップ状態からスリップ状態へと遷移する最大静止摩擦力の時間間隔を用いたPoincare写像を構築した。その結果、パラメータ空間において周期倍分岐がシフトすることにより状態遷移が促されることが明らかになった。 (3) 高調波を利用した新しい振動切削装置の開発: 前年度開発した工具振動に高調波を重畳することが可能な新しい振動装置を用いて、振動切削実験の基礎実験を開始した。また、Grabecの切削モデルの拡張した2自由度の数学モデルを構築し、同モデルの運動方程式と解軌道の振る舞いについて検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における実施内容は: (a)摩擦を伴う非自律系に対する解析手法の確立及び状態遷移メカニズムの解明 (b)微小な高調波強制振動系(微小高調波印加)を用いた状態遷移の制御 (C)振動切削系への応用 (d)実験装置を用いた検証、である。 (a)に関しては、解析を終えている。(b)に関しても最大静止摩擦力の時間間隔を用いたPoincare写像を用いることで解析を可能にし、状態遷移メカニズムに近接している。(c)に関しては、エグロ製NC旋盤UNCLET-10GLを用いて工具振動に高調波を重畳することで実験系全体を構成し、実際の測定を残すのみとなっている。また、Grabecの切削モデルを拡張した数学モデルの解析もはじめている。 乾燥摩擦を用いた1自由度振動切削振動系の実装に関しては、実験環境、特に湿度にベルトコンベアの摩擦係数が大きく左右されるため、実験とシミュレーション両面からの検証が難しいことがわかった。そこで、乾燥摩擦を伴う2次元非自律系と同じアナロジーを有する電気回路系を用いたMixed Mode Osillations(MMOs)に関する研究を開始している。電気系は実装が比較的容易であり、また実験環境に左右されず良好な結果を得ており、その一部は原著論文としてまとめた。 これらを総合すると、研究は概ね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) 摩擦を伴う非自律系に対する解析手法の確立及び状態遷移メカニズムの解明: 前年度までの成果により、乾燥摩擦を伴う2次元非自律系のスティック・スリップ状態からスリップ状態への遷移にはサドルノード分岐および大域的分岐が影響していることがわかった。本年度は、この成果を論文としてまとめる。また、これまでは摩擦に対応するベルトコンベアは一定速度と仮定してきたが、速度が周期的に変動する場合にどのようなメカニズムで状態遷移が発生するのかを明らかにする。一方、電気回路系を用いたMixed Mode Osillations(MMOs)に関しても調査を進めてきた。この研究に関してもこれまで未報告な非自律系に見られるMMOsと悪魔の階段の関係性に関する調査を進める。 (2) 微小な高調波強制振動の印加(微小高調波印加)を用いた状態遷移の制御: 昨年度の研究成果により、状態遷移の一因が周期倍分岐であることは明らかになった。一方、その他の分岐、おそらくsaddle-node分岐もしくは大域的分岐による状態遷移が観察されるため、その原因を調査する。 (3) 振動切削系への応用: 実験系に関しては一昨年度より開発を進め、昨年度、工具振動に高調波を重畳することが可能な新しい振動装置と切削系を融合し、測定環境を構築した。本年度はこれらを用いて切削仕上げ面荒さおよび真円度にする実験を行う。Grabecの切削モデルの拡張した2自由度の数学モデルに関しても引き続きコンピュータシミュレーションによる検討を進める。
|