2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H02878
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
三村 和史 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40353297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 利幸 京都大学, 情報学研究科, 教授 (10254153)
和田山 正 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20275374)
泉 泰介 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20432461)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非線形観測 / 情報理論 / 情報統計力学 / 計算機科学 / 圧縮センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
統計力学的手法に非線形観測の理論と深化については,圧縮センシングおよび非線形観測と同様の数理的な構造をもつ疎結合イジングも系に関する解析を始めとして,関連する問題群の研究を進めた.圧縮センシングにおいては,非線形変換をした場合の影響について解析を進めた.また,L1ノルム最小化において,観測行列の要素が従う確率分布の平均が0でない場合に,スパースなベクトルが正しく推定できるための観測数の条件を解析した.レプリカ法による解析の結果,得られた条件は推定対象のベクトルのスパースさ,および観測行列の要素の平均に依存するのに加えて,推定対象のベクトルの非ゼロ要素の符号の偏りにも依存することがわかった.また,推定をlassoで行う場合の推定誤差への影響を評価した.圧縮センシングに対する反復的アルゴリズムであるISTAを,ニューラルネットワークにより表現することによって,アルゴリズム内のパラメータを学習可能な Trainable ISTAを提案した.提案手法は既存の学習可能アルゴリズムと比較して高速であり,多くの種類の事前分布,観測過程に適用可能である.疎結合イジング模型では,零温度だけでなく有限温度で定常状態を評価する方法について検討を進めた.計算機科学の諸問題への展開については,空間中を移動しながら通信を繰り返すエージェント群からなる受動的モバイルシステムに対して,その理論モデルのひとつである個体群プロトコルモデル上での分散アルゴリズムの研究を中心に行い.特に集合通信操作,メッセージ消失に対する故障耐性に関する結果を得た.また,計算機ネットワークトポロジ上でサイズ3の閉路を検出,列挙する問題に対する高速な分散アルゴリズムを得た. その他の活動としては,情報理論に関するワークショップを開催して,多くの研究者との意見交換の場を得た.これによって最終年度の研究を円滑に進めることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進展していると考えている.主な理由として,統計力学的手法に基づく非線形観測の理論の深化については,圧縮センシングに関する性能評価を行い,線形観測を非線形に変換する非線形性について解析を進めている.非線形符号の距離分布は評価ができている.観測からの推定についても,反復推定法を時間方向へ展開して,深層学習と類似する回路構成とすることによって,アルゴリズム内のパラメータを学習可能できる手法を提案した.この手法は,多くの事前分布および非線形観測を含む多くの観測過程に適用可能である.また,計算機科学の諸問題への展開についても,受動的モバイルシステムに対して,その理論モデルのひとつである個体群プロトコルモデル上での分散アルゴリズムについて,特に集合通信操作,メッセージ消失に対する故障耐性に関する結果を得ていることや,計算機ネットワークトポロジ上で閉路を検出,列挙する問題などに関して研究が進んでいる.このため,解析手法の確立の面で順序の入れ替えがあることや,追加して行った研究課題があることなど,部分的に計画を変更をしている箇所があるものの,概ね計画に沿って進展していると判断できるのではないかと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,以下のように研究を進める.統計力学的手法に基づく非線形観測の理論の深化においては,理論の拡張を行う.圧縮センシングにおいては,今年度までの成果を利用して線形観測を非線形変換した場合の性能評価について,観測行列の性質,推定方法の性質,推定する情報の性質などの影響を網羅的に調べる.非線形関数を変化させることによって,観測値に上限や下限がある場合や,最適な離散化の方法についても検討を進める.グループテストの多元系列への拡張と,その最適な次数分布の評価を行う.これは,グループテストにおいては,検査結果を陽性,陰性の2値とするのではなく,弱く陽性を示す場合の扱いを可能にするものである.有限温度のイジング模型の定常状態の解析についても今年度の知見を利用して引き続き解析を進める.現代符号理論に基づく非線形観測の理論の深化においては,推定アルゴリズムを与えた場合の推定法の性能評価への展開を行うほか,分散アルゴリズムの典型的な問題群の性能解析等に対して応用することを目指す.統計力学と現代符号に基づく理論の融合と計算機科学等の諸問題への展開においては,情報理論・計算機科学の分野に共通する問題群へ,今年度までに得られた知見を適用していく.特に,ゴシップアルゴリズムなどの情報散布問題について,情報の到達確率がネットワークの構造によってどのように変化するかや,耐故障性能を解析的に評価する.平成30年度は,今年度までと同様にセミナーを開催する予定である.研究分担社と連携研究者を中心として,国内外の様々な研究者との継続的な意見交換を活発に行うことによって研究を推進する.
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