2016 Fiscal Year Annual Research Report
センサデバイスによる集団議論における身体同調の取得と知的生産性のモデル化
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16H02891
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 雄一 大阪大学, 情報科学研究科, 招へい准教授 (40359857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 健 大阪経済大学, 人間科学部, 講師 (00707010)
高嶋 和毅 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (60533461)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 感性情報学 / 感性社会学 / アンビエント情報学 / 周波数的同調傾向 / 椅子デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
新たなコンテンツやイノベーション創出において,集団で議論することの重要性が広く認識されるようになってきており,その生産性向上手法の確立が求められている.そこで,本研究課題では,集団的知性(Collective Intelligence)が発揮されるコミュニケーション場の知的生産性を,センサ技術と知的生産性モデルによって評価する手法の確立を目指す. 本年度は,議論の深化・活性化に伴って参加者間に見られる行動的集団現象である身体的同調傾向を,コミュニケーションに影響を与えることなく環境に応じてセンシングする手法の開発を行った.ここで,対象とする環境として,オフィスワークにおける会議室を想定し,コミュニケーションに影響を与えることのないセンシング手法として,部屋に置かれた椅子に着目し,椅子をセンサデバイス化することでこれを実施することとした. 身体的同調傾向としては,コミュニケーション時における体動揺動の周波数特性を取得することを試みるため,椅子のキャスター部すべて(5個)にひずみゲージをベースとした重量センサを取り付け,そこから得られる重量データを元に,着座者の重心位置と重量変化をリアルタイムに取得可能な技術を確立した.デバイスとしての性能評価を実施し,100Hzという周波数で着座者の重心位置と重量変化を取得可能であり,誤差も重心位置については4mm程度,重量については2%程度であることが分かった.これらは実際の人間の大きさや重量に対して,十分に小さい誤差であることから,100Hzで重心位置と重量変化を精度良く取得できると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題で取得対象とする身体的同調傾向を取得するために特に周波数特性に注目したセンサデバイス実装を実施し,誤差も想定内で十分に実用に供することが分かった. さらに実装された椅子型デバイスは座り心地や見た目もほとんど一般的な椅子と変わらないことから,何らコミュニケーションに影響を与えることはないと考えられ,次年度以降に実際のコミュニケーション場で実施する実験で有用であることが示されたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はコミュニケーションの場に適用的なセンシング環境の構築を目指し,下記について検討を進める. ・身体的同調の指標化のためのデータ取得実験 まず,身体的同調の指標化の予備的検討として,任意の3人組および4人組を対象にベンチマークとなる行動を意図的にとってもらい,各センサ座標値データを用いて算出した各指標がこれと対応することを確認する.この段階で,サンプリング周波数の調整や正規化に関する設定も定めるようにする.次に,お互いに未知で同性の男女大学生30名(男女15名ずつ)と,お互いに既知で親しい同性の男女大学生30名(男女15名ずつ)を対象に自然会話実験を行う.得られたデータを基に,姿勢の類似,行動の同時生起,体動の周波数的類似のそれぞれの観点から身体的同調の指標化を図る.未知同士の集団よりも既知同士の集団の方が身体的同調が生じやすいことから,後者の方が身体的同調の指標が高い値になることを確認し,指標の妥当性を担保する.この実験は複数回実施し,指標の検証とセンサデバイスの実装・改良を繰り返す. 実験の検討は伊藤と藤原が,実施とデータ収集,データの統計学的解析は高嶋が行う.得られた指標の有効性の確認は藤原が行い,伊藤が全体を統括する. ・得られたデータの解析によるデバイスの実装 上記実験によりどのような指標をどのように取得すればよいかが明らかになる.その指標を実際のコミュニケーション場に応じて取得するために,どのようなセンサシステムの実装が可能かを検討し,実際に実装することで評価する.デバイスの実装は伊藤が,評価実験については高嶋が担当する.
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