2017 Fiscal Year Annual Research Report
ハイパーソニック・エフェクト発現機構への統合的アプローチ
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16H02892
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
本田 学 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 部長 (40321608)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 非侵襲脳機能計測 / 報酬系 / 音 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはこれまでに、人間の可聴域上限の20kHzを超え複雑に変化する超高周波成分を豊富に含む音は、それを含まない音に比較して、聴取者の報酬系神経回路を活性化するとともに、音質評価を統計的有意に改善することを発見し(ハイパーソニック・エフェクト)、感性脳科学領域のみならず音響産業に大きなインパクトを与えた。本研究では、音響信号の構造解析と、健常人ならびに精神・神経疾患を対象とした心理物理実験、非侵襲脳機能計測、臨床症状の観察、ならびに動物を対象とした神経生理学的検討を用いた統合的アプローチによって、人間の気導聴覚系では捉えることのできない空気振動がどのように生体に受容され、どのように情動神経系に影響を及ぼすか、ハイパーソニック・エフェクトの発現機構を明らかにすることを目的とする。 平成29年度は、C57Bl/6Jマウス(オス16匹)を用いて、オープンフィールドテストと高架式十字迷路を実施した。これらの行動テストは、装置上部に二台の広帯域スピーカー(~100 kHz)を設置した防音室内で行った。16匹のマウスを、1)マウスの不快時発声呈示群、2)ホワイトノイズ呈示群、3)熱帯雨林環境音呈示群、4)無音条件群に分け(各群4匹)、それぞれの条件下における行動を装置上部のカメラで記録し解析した。マウスはテスト前にそれぞれのテスト条件下で10分間防音室に馴化した。その結果、両方のテストにおいて、3)熱帯雨林環境音呈示群のマウスでは、他群のマウスと比較して、自発活動量と移動速度の増加が認められた。また、高架式十字迷路テストにおいて、3)熱帯雨林環境音呈示群のマウスは、他群のマウスよりも早く壁のない通路に探索する傾向が認められ、不安様行動の低下が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常者ならびに精神・神経疾患のヒトを対象とした研究と、マウス・ラットを対象とした研究を並行して進めており、概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.報酬系活性化効果を導く超高周波振動情報パラメータの同定 ①ヒトを対象とした検討:前年度から引き続き、健常者ならびに精神・神経疾患患者を対象として、人工的に複雑性を変化させた様々な超高周波音源をもちいて、被験者に対する侵襲性の少ない脳波計測と最適音量調整法をもちいた心理物理実験と臨床症状の観察により、超高周波報酬系神経回路を有効に活性化する信号パラメータを明らかにする。 ②齧歯類を対象とした検討:マウスにさまざまな音響環境情報を呈示し、そのときの行動変化をさまざまな行動バッテリーを用いて評価するとともに、ドーパミン神経系の活動を低下させたモデルマウスを用いて、行動変化を比較観察する。 2.超高周波振動受容メカニズムの解明 前年度から引き続き、脳波計測と最適音量調整法をもちいた検討により、報酬系神経回路を効果的に活性化する体部位、面積、振動印可方法などを検討する。
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Research Products
(2 results)