2016 Fiscal Year Annual Research Report
Digital Criticism: Link-Oriented Research Infrastructure for Evidence-Based Digital Humanities
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16H02920
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
北本 朝展 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 准教授 (00300707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 陽子 東洋大学, 文学部, 准教授 (70455195)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歴史情報 / デジタル史料批判 / デジタルヒューマニティーズ / エビデンスベース / セマンティックウェブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はデジタル史料批判について、以下の3つの視点から研究を進めた。 (1) デジタル史料批判の基盤構築:デジタル史料批判プラットフォーム(Digital Criticism Platform)の構築に向けて、2つの点からシステムに改良を加えた。第一に、写真と景観をマッチングする「メモリーグラフ」モバイルアプリについては、アプリを再設計して機能を大幅に向上させたバージョンをリリースするとともに、データ管理のための認証機能にGoogle Firebaseを導入した。第二に、データ蓄積を担うリポジトリに関しては、基盤となるソフトウェアDSpaceにも同じくGoogle Firebaseを認証機能として導入することで、モバイルアプリとの通信に同一の認証機能が利用できるようにした。そして、デジタル史料批判の理論的な枠組みについても、1件の招待論文にまとめて発表した。 (2) デジタル史料批判の実践:シルクロード探検隊の中でも特にドイツ隊と英国隊が調査した史料に焦点を合わせ、シルクロード地域の遺跡照合に関する研究を進めた。そしてその成果を、1件の招待論文および1件の国際会議にまとめて発表した。 (3) デジタル史料批判の拡大:提案する方法論の有効性を検証しより一般化するためには、様々なデータを対象に方法論の有効性と限界を検証しなければならない。そこで今年度は、華北交通写真のアーカイブを対象にデータの基礎的な整備を行った。華北交通とは第二次大戦前後に華北地方で交通事業を展開した企業であるが、この企業が残した数万枚の古写真を鉄道路線図と対応付けて解釈するという時空間的な写真の解釈に取り組み、その成果を華北交通写真に関するミュージアム展覧会に出展した。 以上、デジタル史料批判プラットフォームというインフラストラクチャーの整備と、その上に今後の載せていく研究データの整備という、2つの側面から研究を並行して推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、デジタル史料批判の基盤構築、デジタル史料批判の実践、デジタル史料批判の拡大という3つの柱から構成されるが、それぞれについて論文/国際会議での発表やシステム/アプリの公開など、対外的に成果を発信するとともに研究成果の実利用を進めることができたため、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
デジタル史料批判という方法論をさらに一般化するために、今後は以下の3点の課題に取り組む計画である。 第一に、デジタル史料批判プラットフォームで扱うエビデンスの、セマンティックウェブ技術を用いたモデル化である。研究の根拠となる事実や仮説の記述については、情報学・人文学の研究者が議論し、関連する国際標準も参照しながら、学術研究成果を記述するのに十分なレベルにまでモデルを深めていく必要がある。 第二に、デジタル史料批判の拡大における、画像処理のさらなる活用である。デジタル史料批判では、複数の史料の差異を定量的または定性的に分析することで、エンティティの関係性を調査しリンクしていくことが基本的なアプローチとなる。この作業には研究者自身が関わる必要があるものの、一部の定量的な比較については、むしろ画像処理による自動的なマッチングが研究者の負荷を減らし得られる成果の質を向上させるために有効である。これを実現するための技術的な研究開発が、情報学的な面からの重要な課題である。 第三に、デジタル史料批判の実践における、シルクロード関連史料を対象とした歴史学的な調査の進展である。特にヨーロッパには探検隊史料がアナログ形態(古写真や遺物)として残っており、そうした史料の調査が十分に進んでいないという課題がある。そうしたアナログな世界の史料も含めてデジタル史料との統合的な解析をどう進めるかは、人文学における一般的な問題として重要である。実戦に基づきこの問題を解決するため、その研究に適したデータを選び作っていくことも重要な課題として考えている。
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Research Products
(9 results)