2016 Fiscal Year Annual Research Report
Iodine cycle in coastal environment- chemical speciation affected by decomposition of organic matter decomposition-
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16H02929
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大木 淳之 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (70450252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 大樹 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (70550739)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 栄養塩 / 珪藻ブルーム / 沿岸域 / 硝酸還元 / 脱窒 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋観測の実施 2016年4,5,7,8,10,12月, 2017年2,3月に北海道噴火湾で海洋観測を実施した。表面から海底直上まで鉛直的に海水を採取して、無機ヨウ素栄養塩類、有機ヨウ素ガス、酸素の濃度を測定した。 観測結果と解析 2016年3月に春季珪藻ブルームが起こったことが確認されている。それから1ヶ月以上経過して、4~8月に底層で溶存酸素濃度が低下、栄養塩濃度が上昇したので、有機物の分解が進行したことが明らかになった。底層では、リン酸の再生量に対して、窒素栄養塩(硝酸、亜硝酸、アンモニア)の再生量が不足しており、貧酸素化した底質で硝酸還元が起こっていることが考えられた。窒素栄養塩の不足が進行するとともに、同じ底層水でヨウ素酸の減少とヨウ化物イオンの増加が捉えられた。これは、硝酸還元と同時にヨウ素酸の還元が進行したことが原因と考えられた。つまり、底質に浸みこんだ海水中のヨウ素酸が還元され、ヨウ化物イオンが発生する。そのヨウ化物イオンが底層水に拡散して、底層水中のヨウ化物イオンの濃度が上昇したと思われる。底層水では、ヨードエタンの濃度が上昇しており、貧酸素化した環境でヨードエタンが発生・蓄積する可能性が示唆された。 培養実験法の開発 植物プランクトンを石英ガラスボトルに密封し、密封ボトル中の酸素濃度とクロロフィル濃度をモニターする手法を開発した。石英ガラスボトルの内側に酸素スポットセンサーを貼りつけ、ボトルの外側から励起光を照射して蛍光を測定する原理である。後者は、そのボトルにクロロフィル色素を励起する光を照射して、その蛍光強度を測定してクロロフィル濃度に換算する原理である。今後、酸素濃度をモニターしつつ、有機ヨウ素ガスの発生と無機ヨウ素の化学形態の変化を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年の観測では、噴火湾の低層水でヨウ素酸の還元を捉えることに成功した。また、ヨウ素酸還元と脱窒のタイミングが一致することを確認することができた。バイアル瓶での培養方法の確立に向けて、密封ボトル内の酸素濃度とクロロフィル濃度を測定することができた。 したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
海洋観測:2017年4,5,7,8,10,12月, 2018年2,3月に北海道噴火湾で海洋観測を実施する。表面から海底直上まで鉛直的に海水を採取して、無機ヨウ素(ヨウ化物とヨウ素酸イオン)、栄養塩類(硝酸、亜硝酸、アンモニア、リン酸、ケイ酸)、有機ヨウ素ガス(ジヨードメタン、クロロヨードメタン、ヨードメタン、ヨードエタン)、酸素の濃度を測定する。 2017年6-7月にベーリング海陸棚で海洋観測を実施する。海水の測定項目は噴火湾観測と同じである。海水採取に加えて、マルチプルコア観測により海洋堆積物を採取する。堆積物から間隙水を絞り、その水中のヨウ素化合物の濃度を測定する。また、堆積物コアを分取して、密封培養をする。堆積物中での硝酸還元、ヨウ素酸還元の関係を定量的に調べる。堆積物培養においては、酸素を供給する実験区を設けて、有酸素下での有機物分解にともなう、無機ヨウ素の化学形態変化や有機ヨウ素ガス発生についても調べる。 ヨードホルム測定については、その溶存濃度が低すぎるため、検出できないことが推定された。また、粒子状のヨードホルムについては、粒子状有機ヨウ素との区別が難しいことも問題点である。この問題をクリアするには、粒子状ヨウ素の化学形態について調べる必要があり、2017年度以降は、粒子状ヨウ素を昇温して気化・再濃縮する実験をする。気化温度により、有機ヨウ素種と無機ヨウ素を分別する方法を試す予定である。
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