2016 Fiscal Year Annual Research Report
Microbial ecological analysis of soil genesis in the Miyakejima volcanic environment
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16H02932
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
太田 寛行 茨城大学, 農学部, 教授 (80168947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上條 隆志 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10301079)
西澤 智康 茨城大学, 農学部, 准教授 (40722111)
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土壌学 / 微生物生態学 / 生物地球化学 / 環境再生 / 火山噴火 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、三宅島2000年噴火堆積物をモデルとして、生態系再生の基盤である土壌生成と微生物の群集・機能との関係を明らかにし(学術的意義)、火山噴火被災地の環境再生に関する基礎情報を提供すること(応用的意義)である。本研究実績報告では、微生物生態学的解析(細菌分類指標遺伝子のメタシークエンス解析とメタゲノム解析)の結果を中心に述べる。2016年度の研究では、経時的な土壌化の様相を明らかにするために、2014年の調査で土壌化が観察されたIG9地点の火山灰堆積物(C層、C-14)と土壌化した層(A層、A-14)を中心にして、当研究室が保有する2009年と2011年に採取した試料(C-09、C-11)と、2015年と2016年の採取試料(C-15、A-15;C-16、A-16)を解析した。まず、炭素含量(g/kg)は、C層で、2014年に急激な一過的な増加が見られた:0.3(C-09)-->0.9(C-11)-->6.7(C-14)-->1.0(C-15)-->1.3(C-16)。一方、A層が検出された2014年の試料では、C-11と比べると90倍の炭素含量の上昇があり、翌年以降減少した:80.7(A-14)-->56.9(A-15)-->13.6(A-16)。細菌叢を解析すると、C層とA層の両方で、Acidobacteria門とAlphaproteobacteria綱の割合が高かった。詳細に見ると、A-15で優占したAlphaproteobacteria綱が翌年以降に漸減するのを補完するように、Betaproteobacteria綱の割合が増加した。特に、その中のOxalobacteraceae科の一過的な増加が特徴的であった。炭素循環の観点で、RubisCOの遺伝子(rbcL)を調べた結果では、供試試料のなかでC-09が他と比べて高い割合を示し、先の研究での植生のない地点の様相と類似していた。窒素循環系の遺伝子のなかで、硝化以外の遺伝子は、全試料で検出された。今回のメタゲノム解析では、ほとんどの試料で硝化系の遺伝子が検出されなかった。これは三宅島のような環境では硝化系の回復が遅いことを示すと推察されるが、その検証は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三宅島2000年噴火堆積物をモデルとして、土壌形成プロセスの概要を微生物学的に明らかにしたと言える。2003年から継続してきた研究結果と今回の結果を合わせて考えると、土壌形成プロセスは、土壌微生物学的には2段階に大別され、第一段階は、炭酸ガス固定と窒素固定を行う化学合成無機栄養細菌が主体になって、大気から火山灰堆積物に炭素と窒素を取り込むステップである。第二段階は、植物の侵入によって、植物の光合成による有機炭素が火山灰堆積物に持ち込まれて、炭素含量が急激に増加し、特定の細菌群が応答して増加する。その応答する主体は、Betaproteobacteria綱の細菌で、特に、その中のOxalobacteraceae科の細菌が重要であると考えられる。以上のことから、土壌生成と微生物の群集・機能との関係を明らかにする目的(学術的意義)は、二段階プロセスという仮説の提唱という点で、ほぼ半分程度は達成されたと言える。今後は、その検証に向けて研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
先の「現在までの進捗状況」で述べた二段階の土壌形成プロセスの仮説で、第二段階の初期過程、すなわち、植物が侵入した直後の状態の解析を行う。調査対象地点は、2000年の噴火後約10年間、火山ガスの影響で植生が回復しなかったOY地点とする。この地点は数年前からハチジョウススキの侵入が起こっており、パッチ状の植物の分布が第二段階の初期過程に相当すると考えられる。まず、根圏と非根圏の微生物群集を解析して比較する。ねらいは、根圏の微生物群集が非根圏へと拡散していくプロセスを捉えることである。 並行して、活動している微生物群集の解明に向けて、火山灰堆積物からのRNA抽出とメタトランスクリプトーム解析の準備を行う。RNA抽出は2016年度にも試みたが、火山灰堆積物の場合には特別の手法を開発することが必要であった。その手法開発の取組は2017年度も継続する。また、現場での炭酸ガス固定と窒素固定の活性測定も行って、微生物群集と活性との関係も探る。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Colonization of two early successional plant species with different nitrogen usage affects abundance of soil animals and herbivorous insects, and ecosystem process on volcanic deserts in Miyake-jima Island, Japan2016
Author(s)
Kamijo T, Mori Y, Kadokura, Hashimoto H, Yamaji K, Minamiya Y, Kaneko N
Organizer
II International Conference on Island Evolution, Ecology, and Conservation
Place of Presentation
University of the Azores, Angera Heroisma, Terceira Island, Portugal
Year and Date
2016-07-18 – 2016-07-22
Int'l Joint Research