2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a nephelometer for the detection of single particle optical property
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16H02936
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松見 豊 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (30209605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 智喜 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 講師 (40377784)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エアロゾル / 光散乱 / レーザ / 光学特性 / 大気微粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
粒子1粒ずつの個別粒子の光散乱角度分布が測定可能な角度分解型ネフェロメータのハードおよび解析ソフトを拡充した。それを用いた室内実験により、種々の粒子の光散乱のデータベースを作成した。本装置は、直線偏光した532nmのYAGレーザーを光源としており、装置の中心点でエアロゾルによる光散乱が起き、光散乱を42個の受光器で検知している。受光器はレーザー光源の偏光に対して垂直な面と平行な面の2つの面に配置し、約8.3度ごとの角度分解能で光散乱角度分布を測定することができる。受光器は直径4mmの受光面をもつアンプ付きフォトダイオードであり、エアロゾル光散乱点から100 mmの距離に配置する。42個の受光器の出力を高速のA/Dコンバータで処理し、データ処理用のパソコンに送る。試料気体中の1つの粒子の散乱信号を分離できるようにしている。光散乱の角度分布は、Mie散乱理論に基づく理論的な角度分布と比較している。 標準粒子である球形のポリスチレンラテックス粒子、ニグロシンの粒子、非球形で四角い粒子である海塩粒子を模擬した塩化ナトリウムなどの光散乱角度分布を測定した。また、二次有機エアロゾル粒子の典型的なもの、砂塵などの鉱物粒子、硫酸塩粒子などの様々な組成の粒子の粒子径の種々のものの光散乱特性を測定した。エアロゾル粒子の光学特性に関するデータは、大気中の放射伝達過程の重要なファクターとなり地球環境の将来予測モデル計算にも重要な役割を果たす。 この装置で大気中のPM2.5粒子の光学特性の測定と化学成分の推定をするが、PM2.5の問題が深刻になっているインド、インドネシア、マレーシア、モンゴル、中国などの発展途上国での計測が重要である。そのため、設置の準備のため発展途上国の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粒子1粒ずつの個別粒子の光散乱角度分布が測定可能な角度分解型ネフェロメータの新規性の高い独創的な装置を完成させており、それを用いて実験室で種々のエアロゾル粒子を生成させて測定し、粒子の光学特性と成分との関連を明確にすることが出来た。この結果を国際誌Aerosol Sci. Technol.に論文としてまとめて既に発表している。また、実際の外気中のエアロゾルの測定を進めており、その結果をまとめて国際誌へ投稿しようとしている。おおよそ論文の内容がまとまり、最終的なチェックをしている段階である。 小型のPM2.5計測器の開発と応用が進み、日本国内やアジアの国々で計測を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度より引き続き、粒子1粒ずつの個別粒子の光散乱角度分布が測定可能な角度分解型ネフェロメータのハードおよび解析ソフトを拡充する。光散乱の角度分布は、Mie散乱理論に基づく理論的な角度分布と比較する。開発している装置では、粒子の光散乱点が一点ではなくてレーザー光線の光路に沿った直線上にあること、受光器は受光面の面積を持っていることから、1点散乱の立体角度の理想的なMie散乱角度分布からずれる。この補正を、モンテカルロシミュレーションにより、散乱点の大きさや光電面の大きさを取り込み、試作している角度分解ネフェロメータに合わせた理論散乱角度分布を計算する。 開発した装置で実際の大気のエアロゾルの個々の粒子の光散乱角度分布を測定して、その粒子のサイズ、形状、屈折率が計測可能である。レーザー気化イオン化質量分析計やエアロゾル質量分析計、あるいは従来型のハイボリュームサンプラと実験室での化学分析作業などを同時に行って、存在するエアロゾルの組成を正確にモニターしながら、組成と光散乱特性の対応を明確にする。また、エアロゾルをサンプリングして電子顕微鏡でひと粒ずつの画像を見ながら比較をする。 さらに、平成29年度に引き続き、小型でより簡便な測定ができるPM2.5の検出装置を製作する。装置を非常にコンパクトなものにするため、光源には小型のLEDを使用している。この装置で大気中のPM2.5粒子の光学特性の測定と化学成分の推定をするが、PM2.5の問題が深刻になっているベトナム、インド、インドネシア、マレーシア、モンゴル、タイなどの発展途上国での計測が重要である。そのため、発展途上国に小型PM2.5の装置を設置し、長期間の測定を行う。また、発展途上国の大学などの大気環境の研究者を招聘し、PM2.5の観測の計画をたて、実行する。得られた結果を取りまとめて学会発表および学術誌への発表を行う。
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