2017 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluation of ocean acidification and its biological affection in North Pacific subsurface waters
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16H02949
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
小埜 恒夫 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 国際水産資源研究所, グループ長 (40371786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木元 克典 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任技術研究員 (40359162)
岡崎 雄二 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, 主任研究員 (90392901)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海洋酸性化 / 海洋中層 / 浮遊性有孔虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度と平成29年度の3航海で、混合水域における炭酸系の鉛直採水と浮遊性有孔虫の層別採取を行い、1997年との鉛直分布の変化を調べた。1997年と2016・2017年との間で、アルカリ度の鉛直分布に有意な変化は見られなかった一方、全炭酸は中層で顕著な増大を示た。現在のアラゴナイト飽和深度であるσθ=26.8等密度面付近(水深300m-400m)において、1997年と2016・2017年の間のDIC増加量は30μmol/kgに達していた。このようなDICの経年的な増加シグナルは、増加量を減衰させながらσθ=27.0等密度面付近(水深400m-550m)まで認められた。逆に、現在のカルサイト飽和深度であるσθ=27.15等密度面付近(水深500m-700m)では、DICは1997年当時1997当時よりもむしろ10μmol/kgほど小さな値を全測点で示した。このDICの変化を受けて、アラゴナイト飽和深度は1997年時点のσθ=26.9(水深350m-450m)から2016・2017年平均ではσθ=26.8(水深300m-400m)まで上昇した。一方カルサイト飽和深度は2016・2017年平均でσθ=27.3と、1997年および2017年5月のσθ=27.15から増加を示した。 浮遊性有孔虫G. scitulaの鉛直分布は、1997年においてはσθ=27.1~27.3に分布密度のピークを持っていたが、2016~2017年では分布のピークがσθ=27.2~27.3に深度増加していた事が判った。これはカルサイト飽和深度の変化にちょうど対応しており、本種がカルサイト飽和深度の変化に反応して鉛直分布を変動させた可能性を示している。これは海洋中層の生物種が酸性化状態の変化に対する応答を観測した初めての事例となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた海洋観測を無事終了し、得られた試料の解析から、海洋中層の酸性化進行状況の評価を行うことができた。また浮遊性有孔虫の鉛直分布の経年変化を世界で初めて観測し、この生物が海洋中層の酸性化状況の変化に応じて鉛直分布を変化させている事を示唆するデータを得る事ができた。これらのことにより、海洋中層における酸性化進行状況の把握と、それに対する中層生態系の応答の検出という、本課題の2つの目標をほぼ予定通り達成する事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
残り一年の研究期間において、浮遊性有孔虫の分布の変化だけでなく、有孔虫の殻密度や殻形状と言った形態学的な側面への酸性化の影響や、中層性カイアシ類等の他生物種への酸性化影響の評価といった、より高度な酸性化生態系影響評価を実施していく他、これまでに得られた成果を国際学会や論文誌において情報発信していく予定である。
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