2016 Fiscal Year Annual Research Report
低線量率放射線被ばくによる造血幹細胞障害とその分子基盤の解析
Project/Area Number |
16H02955
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
瀧原 義宏 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (60226967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 芳典 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (10548986)
安永 晋一郎 福岡大学, 医学部, 教授 (50336111)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低線量率放射線被ばく / 造血幹細胞 / 多分化能 / 長期骨髄再構築能 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血組織は放射線に対して高感受性であり、急性放射線障害においてはまず造血不全が問題になることが多い。また晩発性放射線影響によって白血病や骨髄異形成症候群が発症することが危惧される。そこで、従来から造血組織に対する放射線被ばくの影響について精力的な解析がなされて来たが、これらの多くは高線量・高線量率被ばくの造血組織への影響について解析されたものであり、低線量・低線量率被ばくの影響についての知見は未だに乏しい。研究室ではマウス造血幹細胞の活性を支持する分子基盤の解析を進めて来た実績を有するので、本研究では低線量率被ばくの造血組織への影響について解析するとともに、分子レベルにまで解析を進め、低線量率被ばくの造血組織への影響を防ぐための基盤理論の確立を目指す。 すでに、マウスに対して100 mGy/日の低線量率での放射線照射を1ヶ月行うと造血幹細胞が特異的に著減することを明らかにしているので、初年度には、造血幹細胞の減少が引き起こされる線量率と照射期間について検討した。これらの解析結果を基に、低線量率での放射線照射の累積線量と同程度の線量の高線量率の放射線照射を行い、造血幹細胞数に対する影響が同じ累積線量でも低線量率と高線量率の放射線照射でどのように異なるのかについて比較検討を行った。さらにメチルセルロース法による造血前駆細胞の解析や蛍光色素Kusabira Orangeを指標として5系統の血球細胞系譜の追跡が可能なKuOマウスを用いて、造血幹細胞の多分化能や長期骨髄再構築能の解析を行い、低線量率での放射線照射が造血幹細胞の活性に及ぼす影響を明らかにした。そして、同じ累積線量の放射線照射でも低線量率と高線量率で造血幹細胞の活性に対する影響がどのように異なるかについて詳細な検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、造血組織に対する放射線被ばくの影響は、高線量・高線量率被ばくの影響について解析されたものがほとんどであり、低線量・低線量率被ばくの影響についての知見は乏しかった。しかし、福島原発事故を契機として、低線量率被ばくの生体に対する影響を明らかにすることが急務となった。広島大学原爆放射線医科学研究所においては実験動物を用いて低線量率放射線被ばくの影響を解析するための放射線照射設備が完備したことによって本研究を本格的に執り行うことが可能になった。 そこで、初年度は、造血幹細胞の減少が引き起こされる線量率と照射期間について検討した。これらの解析結果を基に、造血幹細胞数に対する影響が同じ累積線量でも低線量率と高線量率の放射線照射でどのように異なるかの比較検討を行った。さらに、造血前駆細胞の解析や5系統の血球細胞系譜の追跡が可能なKuOマウスを用いて、造血幹細胞の多分化能や長期骨髄再構築能の解析を行うことによって、低線量率での放射線照射が造血幹細胞の活性に及ぼす影響を明らかにすることができた。そして、同じ累積線量の放射線照射でも低線量率と高線量率で造血幹細胞の活性に対する影響がどのように異なるかについて詳細な検討を行った。造血幹細胞の長期骨髄再構築能に対する放射線被ばくの影響については、1次移植だけでなく、2次移植も実施し、造血幹細胞の自己複製能に対する影響も明らかにすることが必須であるため、次年度においても継続して解析を進める必要があるが、本研究は初年度において概ね順調に進めることが出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究によって、低線量率の放射線照射によって造血幹細胞の数と活性にどのような影響がもたらされるかについての解析を概ね順調に進めることができた。そこで、次年度は、これらの解析をさらに進める。特に低線量率放射線照射した造血幹細胞の長期骨髄再構築能に対する影響に関する解析については、1次移植だけでなく2次移植も執り行い、造血幹細胞の自己複製能に対する影響も観察し、詳細な機能解析を実施する計画である。 さらに、次年度においては低線量率放射線照射の造血幹細胞の数と活性に対する影響がどのような分子基盤によって引き起こされるかについて、詳細な分子生物学的な解析を行うことを計画している。特に、低線量率放射線照射がどのようにして造血幹細胞の数と活性を損なって行くのかついて、ゲノム損傷応答と細胞分化制御の観点から分子レベルでの解析を進める計画である。造血システム各段階の細胞に対する複数の表面分化マーカーを用いた細胞分画法を駆使して、造血幹細胞や造血前駆細胞の各分画の細胞がどのような影響を受けているのか、さらにそれらから成熟血球が産生される際にどのような異常が引き起こされているのかについて、細胞免疫染色法や単一細胞レベルでの遺伝子発現解析法を駆使し、低線量率放射線照射の造血幹細胞に対する影響について分子生物学的解析を詳細に進める。そして、その解析結果を基に、低線量率放射線照射の造血幹細胞に対する影響を防御する方法を模索するための基盤を構築することを目指す。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Effect of low dose-rate irradiation on the hematopoietic stem cells2017
Author(s)
Ohno, Y., Shirasu, N., Suzuki-Takedachi, K., Santo, M., Guo, Y., Kanno, M., Yasunaga, S., Ohtsubo, M., Takihara, Y.
Organizer
The 1st International Symposium of the network-type Joint Usage/ Research Center for Radiation Disaster Medical Science
Place of Presentation
Hiroshima, Japan
Year and Date
2017-02-21 – 2017-02-22
Int'l Joint Research
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[Presentation] Low dose-rate irradiation specifically affects hematopoietic stem cells.2016
Author(s)
Ohno, Y., Suzuki-Takedachi, K., Santo, M., Guo, Y., Kanno, M., Yasunaga, S., Ohtsubo, M., Naka, K., Takihara, Y.
Organizer
第78回日本血液学会学術集会
Place of Presentation
横浜
Year and Date
2016-10-13 – 2016-10-15
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[Presentation] Low dose-rate irradiation specifically affects hematopoietic stem cells2016
Author(s)
Takihara, Y., Ohno, Y., Suzuki-Takedachi, K., Santo M., Yasunaga, S., Ohtsubo, M., Naka, K.
Organizer
45th Annual Scientific Meeting of the International Society of Experimental Hematology
Place of Presentation
San Diego, USA
Year and Date
2016-08-25 – 2016-08-28
Int'l Joint Research
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[Presentation] Effect of low dose-rate irradiation on the hematopoietic system.2016
Author(s)
Ohno, Y., Suzuki-Takedachi, K., Santo, M., Guo, Y., Kanno, M., Yasunaga, S., Ohtsubo, M., Naka, K., Takihara, Y.
Organizer
The 14th Stem Cell Research Symposium
Place of Presentation
Awaji, Japan
Year and Date
2016-05-20 – 2016-05-21