2016 Fiscal Year Annual Research Report
河川工作物が底生魚類の個体群・群集に及ぼす生態的影響の多面的評価手法の確立
Project/Area Number |
16H02966
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
棗田 孝晴 茨城大学, 教育学部, 准教授 (00468993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 恵一朗 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (00371865)
阿部 信一郎 茨城大学, 教育学部, 教授 (40371869)
田原 大輔 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (20295538)
武島 弘彦 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特任助教 (50573086)
松崎 慎一郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (40548773)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 底生魚類 / 河川工作物 / 生息分布 / 遺伝的多様性 / 多面的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)河川工作物が底生魚類カジカの河川内移動と遺伝的多様性に及ぼす影響評価 河川工作物が複数存在する那珂川水系藤井川の流程において、異なる落差(21cm、40+75cm)を持つ工作物の上下区間(中流域、上流域各1か所)を調査地として設定し、PITタグを装着したカジカ大卵型の河川内移動調査を2016年7月以降ほぼ毎月行った。多くの個体はそれぞれの区間内に留まっていたが、落差の小さい区間(中流域)では工作物の上下間で個体の移動が認められたのに対し、落差の大きな区間(上流域)では工作物の上流から下流への1方向流の移動のみが観察された。また上流域と中流域で採捕された109個体を対象として、21種類のマイクロサテライトDNAマーカーに基づく遺伝的集団構造の解析を行った。上流域の集団の遺伝的変異性(Allelic richness)は中流域の集団よりも小さいこと、また主座標分析による個体間の遺伝的差異の検討から、中流域の集団には上流域に由来する流下個体が含まれている可能性が示唆された。 2)河川工作物が底生魚類の生息分布と生息環境に及ぼす影響評価 河川工作物が連続して出現する茨城県北部の河川において、ハゼ科の通し回遊魚(スミウキゴリ、シマヨシノボリ)2種の生息分布と生息環境について2016年8月に調査を行った。2種の生息密度は下流から上流にかけてともに減少する傾向が認められたが、2種の生息密度を説明する重回帰式の結果から、累積堰数が生息密度に及ぼす影響はシマヨシノボリよりもスミウキゴリで相対的に大きいことが示された。生息環境調査から、瀬ではシマヨシノボリ、淵ではスミウキゴリが多く捕獲され、2種の捕獲個体数の比率には瀬・淵間で有意な偏りが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
流程に河川工作物が連続して出現する河川において、PITタグを用いたカジカ大卵型の個体の移動追跡及び高感度のマイクロサテライトDNAマーカーを用いた河川流程の遺伝的集団構造の把握に着手でききている。また、カジカ大卵型以外の底生魚類についても、河川工作物が生息分布や生息環境に及ぼす影響について定量的な知見を得ることができた。安定同位体分析のための試料についても取得済であり、次年度で直ちに分析を行うことができる体制にあることから、おおむね順調に進展しているものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝的分析については、河川流程に沿ったカジカ大卵型の非破壊的なサンプリングを通じて、河川工作物が本種の遺伝的多様性に及ぼす影響を明らかにする。また安定同位体分析についても、希少種に負荷が掛からない試料採取方法を確立し、それを基に分析を進めていく方針である。
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Research Products
(12 results)