2016 Fiscal Year Annual Research Report
地域スケール及び周極全体スケールの相互比較から探る南極海動物プランクトン群集変動
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16H02970
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
高橋 邦夫 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (50413919)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生物海洋 / 動物プランクトン / 連続プランクトン採集器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、南極海において連続プランクトン採集器(CPR)を用いた観測を実施している国々の観測データを主要なデータセットとし、地域スケールおよび周極全体スケールで、動物プランクトン群集の中長期的および短期的な変化やトレンドを抽出することを目指している。得られた結果から、生態系変動への波及効果の大きい指標種の選定、および南極海の動物プランクトンに関するStatus Reportの作成を目標とする。 平成28年度は標本処理のため2名の研究協力者を雇用し、環境整備として顕微鏡1台、パソコン2台を整備した。また一部標本はプランクトン分析業者に委託して標本処理を進めた。 8月にマレーシアで行われた南極研究科学委員会(SCAR)のビジネス会合においてオーストラリアおよびフランスの海外共同研究者と共同解析について討議を行った。11月には海外共同研究者であるオーストラリアのグラハム・ホージー博士を招聘し、25年にわたる南極海CPRプロジェクトの総括を行い、Status Reportの準備を進めた。また平成29年度に予定しているインドでのCPR技術者養成のためのワークショップについて討議を行った。 これまで日本が主導した季節的なCPR観測データを解析した結果、動物プランクトン群集で卓越するカイアシ類2種(Oithona similisとCtenocalanus citer)が群集変動に大きく寄与していることが明らかとなった。この成果は2月の北海道紋別市で行われた北方圏国際シンポジウムにて発表し、国際誌への投稿準備を進めている。また短期的な現存量の増減が最も頻繁に観察される分類群として、翼足類に着目し解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は作業支援として大学院学生を2名雇用するとともに、外部のプランクトン分析業者に委託した結果、保持する全ての標本処理を実施することが出来た。また南極研究科学委員会のビジネス会合、およびオーストラリアの海外共同研究者の招聘、さらには12月にオーストラリア南極局において、CPRテクニシャンを集めたワークショップを開催した(他経費による)ことで、海外共同研究者と3度にわたり、研究課題の遂行にむけた討議を実施した。特に本研究課題の目標の一つであるStatus Reportの作成を初年度から開始することが出来た。またCPR観測を目指す新規参入国として、インドでのワークショップの立案が進み、平成29年度に開催する計画で準備を進めている。インドによる観測が開始されれば、周極全体スケールによる共同解析がより充実することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本応募課題で用いるCPR標本は、処理に専門的な知識と技術を必要とする。そのため標本処理を担当する研究協力者の確保が困難な場合は、外部のプランクトン分析業者に委託することで補う。 動物プランクトン群集の変動解析は、対象種となる分類群を絞って進めていく。中長期変動の検出として小型のカイアシ類、短期的変動として翼足類に焦点を当てる方針である。 平成29年度は新規参入国としてインドにおける技術者育成のためのワークショップを計画している。また平成30年度以降には参加諸外国すべての技術者を集めた大型ワークショップを立案する方針である。またStatus Reportについても毎年、海外共同研究者の招聘、あるいは派遣により、執筆に集中する機会を設けて推進する。
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Research Products
(2 results)