2017 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外SPRを利用した電気化学-光ファイバーセンサーの開発と環境分析への応用
Project/Area Number |
16H02976
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
倉光 英樹 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (70397165)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 一晴 前橋工科大学, 工学部, 教授 (30271753)
田口 明 富山大学, 研究推進機構 水素同位体科学研究センター, 講師 (40401799)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 分光電気化学 / 光ファイバー / 局在表面プラズモン共鳴 / 金ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近赤外域の表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance: SPR)を利用した電気化学-光ファイバーセンサーを開発し、新たな環境分析デバイスとして確立させることを目指している。このセンサーは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を示す金ナノ粒子と透明電極を修飾した光ファイバーからなる。LSPRはコア内を伝播する光の全反射界面に染み出すエバネッセント波によって励起され、分光検出器で吸収スペクトルとして検出される。分析対象物質は電気化学的な酸化還元反応から得られる、鋭敏なSPRシグナルの波長シフトから検出されるため、二元の選択性を同時に発現する高感度センシングが可能になる。 昨年度は、コアを露出させた光ファイバー表面に酸化インジウムスズ(ITO)を多角バレルスパッタリング法によって均一に蒸着し、球状の金ナノ粒子を高分子電解質から成る自己組織化膜によってITO表面に修飾することでセンサーを作製することに成功した。さらに、モデル分析対象物質として用いたRu(NH3)2+/3+、チレンブルー(MB)とFe(CN)63-/4-の電気化学反応に伴う金ナノ粒子の自由電子密度変化に起因するLSPR波長シフトの測定にも成功した。 本年度は、研究計画に従い、金ナノロッド粒子(GNRs)を利用した、センサーの高性能化を試みた。GNRsは球状のナノ粒子と比べて数倍から数十倍の屈折率感度を持ち、粒子の縦横比によって屈折率感度が変化する。そこで、縦横比の異なるGNRsを修飾したセンサーを作製し、感度の制御を試みた。縦横比が2.0,2.4,3.1のGNRsをそれぞれ修飾したセンサーで測定を行ったところ、縦横比の増加に伴ってRu(NH3)2+/3+の検量線の傾きが上昇し、縦横比3.1のGNRsを用いた時に最大で約10倍の感度向上を達成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
綿密に立案した研究計画に従い、目的とするセンサー開発の部分と基本的な性能評価を終了することができた。また、金ナノロッドを作製し、センサーの高感度化を果たすことにも成功した。さらに、研究計画には記載していなかった、プラズマ処理によるセンサーの再生にも成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下の2点に関するセンサーの応用研究を推進する。 1.ヒトへの深刻な影響が懸念される合成抗生物質を対象とし、下水や畜産排水中に含まれるテトラサイクリン系抗生物質の遠隔リアルタイム計測システムへの応用。 2.汚染度の高い環境水や土壌間隙水など、従来法では直接計測できないマトリクスが複雑な試料の毒性評価を可能にするメディエーター型酵素センサーの開発。 また、LSPRの波長が電位を掃引することでシフトする現象を利用すると、単波長のLSPRの強度から溶液の屈折率変化が測定可能であることを見出した。この現象を利用した、本センサーの応用にも着手しようと考えている。
|