2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規高電界パルス物質導入法によるメダカ胚期生態毒性試験の高感度化
Project/Area Number |
16H02990
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Research Institution | Ariake National College of Technology |
Principal Investigator |
冨永 伸明 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (30227631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河平 紀司 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (60629210)
有薗 幸司 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (70128148)
石橋 弘志 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (90403857)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リスク評価 / 生態毒性 / メダカ胚 / 高電界パルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,実施計画に従って行った結果,以下の研究成果を得た. 1.物質導入装置の改良 従来の研究をもとにメダカ卵に物質導入を行うための最適組み合わせパルス条件を決定した.卵の状態に季節変動があるため,印加電圧が一定の範囲で可変できる比較的安価で簡易な電源が試作機を作製した.再現性を確認した結果,安定した再現性が確認できた. 2.物質導入法を用いたTG236のメダカへの改良 メダカ受精卵を受精後採取し,選別し,使用することで再現性が高い結果が得られた.暴露後も培養温度を25℃に保つことで安定した発生影響の観察が可能であった.アセタミプリドおよびイミダクロプリドの影響を実際に評価したところ,胚に対する急性毒性はほとんど見られず,これは従来の試験法で得られた結果と同様であった.しかしながら,両物質ともに致死には至らない低濃度で形態形成をエンドポイントに観察することで,心臓形成異常や心臓の拍動不整による血液循環の異常が引き起こされることが分かった.また,孵化には至るが形態の異常により,泳ぎだせないものも現れた. 3.化学物質の定量 アセタミプリドおよびイミダクロプリドに対するLC/MSの検量線の作製は終了しており,暴露濃度の実測を行っている. 4.化学物質影響の分子生物学的な解析 発生初期段階のシグナルのキーイベントを見つけるためには,暴露後,早い時期の受精卵の遺伝子発現変化を調査する必要があると考えた.そこで,暴露2日後の受精卵の遺伝子発現状況を調査することとし,次世代シークエンサーによる遺伝子発現変化量の解析に十分なRNAを必要となる受精卵数について検討したところ,今回50個程度必要であることが分かった.現在,低濃度域でアセタミプリド,イミダクロプリド暴露を行い,遺伝子発現状況の解析を委託した.現在,遺伝子発現変化のネットワーク解析を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究項目について,ほぼ予定通りの進捗である.今年度の最大の目標であったメダカ受精卵への物質導入条件の精査もほぼ予定通り行うことができ,簡易化した装置もひとまとめにしてコンパクト化するだけになっている.従来法より,メダカ受精卵に直接導入することで,高感度である可能性を示唆する結果も得られている.導入量の測定は,卵への総導入量が低いため,外液ベースでしか測定ができない可能性があるが,もう少し定量感度の上昇の可能性について検討する.代謝物の合成は3化合物について合成できており,当初予定を上回っている.次年度は共同研究者を追加して,さらに合成数を増やす予定である.遺伝子の発現解析は,親化合物2物質についてはRNA-Seq解析が終了しており,ネットワーク解析等の詳細な解析を行うところになっている.以上のことから,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
高電界パルス印加装置の作製ができたものの,観察数を増やすには,マンパワー的に不足することは否めない.今年度,導入したデジタルマイクロスコープは,従来機より操作性が高いため,有効に活用して少しでも多くの化合物および詳細な観察を行うことにする.代謝物の合成については,当初予定より進んでいるが,次年度は,共同研究者を追加して,さらに多くの化合物の合成を計画する予定である.合成代謝物の定量系の確立も急ぎ,より定量性が高い評価系にしていく予定である.さらに,遺伝子発現変動解析についても次年度は代謝物の評価を急ぎ,親化合物からの代謝による遺伝子発現に与える影響についても詳細な解析を急ぎたいと考えている.
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