2018 Fiscal Year Annual Research Report
Plant Community Classification in the Biodiversity Hotspot of Kushiro Wetland using Super Multispectral Images
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16H02991
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉野 邦彦 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (60182804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
露崎 史朗 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (10222142)
串田 圭司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (90291236)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生物多様性ホットスポット保全 / 釧路湿原 / 精細植生図 / リモートセンシング / エンドメンバー推定 / 多重分光衛星画像 / 広域湿原植物群落分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,研究対象地(釧路湿原高層湿原域)の詳細な植物群落図を完成させ,また,2000年と2017年に撮影された衛星画像データに変化検出アルゴリズムを適用し,この17年間には広域で高層湿原域の植生が変化していた可能性が高いことを見出した.そして,1998年,2010年撮影の低高度空中写真から作成した複数年の植生群落図との比較から,ある箇所では湿潤な環境を好む植物群落が拡大し,一方,別の箇所ではより高層湿原が発達していることを示した.現地調査から,この変化を裏付けた,この成果を学術研究論文として学術雑誌に発表した. また,精細植生図作成のプロセスにおいては,①地上植物写真を用いての植物群落種決定アルゴリズムを開発し,現地植物調査を補完する植物調査法を確立した.②夏季に現地植物調査を行って,画像分類のための植物群落参照データを整備し,2015年撮影のドローン空中写真を用いての40種の植物群落の精細植生図(赤沼地区)を完成させた.その他,本研究プロジェクトを通して,低高度空中写真を用いた精細湿原植生図作成方法を確立したので,その方法を釧路湿原以外の湿原,標津湿原高層湿原地域に適用し,精細植生図を作成し,学術雑誌に発表した.他に衛星画像を用いた湿原植生分類研究,山岳植生の空間分布解析研究,湿地火災後の植生回復研究の成果を英文学術誌に発表した. さらに,植生被覆率を多時期観測衛星分光反射率データから推定する計算アルゴリズムと画像データ処理法を開発し,国際大会(AGU Fall Meeting 2018, Washington DC, USA)で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,環境変化の予兆が局所的に認められ生物多様性に富む釧路湿原の高層湿原(生物多様性ホットスポット)を対象にして,1)衛星ハイパースペクトラル・リモートセンシング画像データ(超多重分光画像データ)を用いて,複数年次分の高正答率の詳細な植物群落図を作成して,2)それらを比較することにより,より広範囲の高層湿原内の植物群落変化の有無を確認し,3)変化の原因やメカニズムを考察することにより,当湿原の貴重な生物多様性の保全に寄与することを目的としている. この目的の遂行のために,第一に,衛星超多重分光画像による複数年次の正確な植物群落図を,画像分類アルゴリズムにより作成するために必要不可欠である,エンドメンバーと称する衛星画像撮影時の植物群落の分光反射特性の推定を試みている.エンドメンバーの推定アルゴリズムは,低高度空中写真から作成する精細な植物群落図から得られる衛星画像ピクセルの地上瞬時視野内に存在する複数の群落の占有面積率と衛星ピクセル値(ミクセル)を連立させ,衛星画像分類に必要な植物群落のエンドメンバーを推定するものである. 現在まで,①複数年次の低高度空中写真から精細な植物群落図を完成させた.②低高度空中写真撮影と同じ年次,ほぼ同じ季節に撮影された衛星画像データを入手,低高度空中写真と重ね合わせられるように精密幾何補正を終えている.エンドメンバー推定アルゴリズムの稼働と精度検証,そして広域画像分類による対象地域の植生図作成が残されているのみである. また,複数年次の低高度空中写真から作成した精細植生図を比較することによって,① 対象地域での植生変化の実証,②植生遷移(遷移の前後の植生)の記述に成功している.この比較により,当該研究対象湿原では,自然な植生遷移が進行している地域が確認されると同時に,自然な植生遷移とは逆行する過湿を好む植物群落域が拡大していることが確認された.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,以下の手順でデータ解析を行い,衛星画像データの解析により,研究対象地(釧路湿原高層湿原域)の詳細な植物群落変化を検出し,その変化の特徴をまとめ,変化原因を考察,湿原の保全政策を提案して研究をまとめる. 1)夏季にドローン空中写真撮影ならびに現地植物調査を行って,精細植物群落図(温根内地区)を完成させる. 2)赤沼と温根内地区の低高度空中写真から作成した精細植生図を用いて,超多重分光衛星画像データの逆ミクセル解析により,高層湿原植物群落の高精度な分類のために必要な植物群落種毎の衛星画像特徴量エンドメンバーを推定する.推定したエンドメンバーの妥当性を検証するために,現地植物群落分光反射率測定を行い,植物群落の分光反射率の特徴を把握する. 3)複数年次の観測衛星画像(2000年撮影と2015年撮影)の分類図を比較し,植生変化を検出し,変化箇所の空間解析(位置,面積,変化前後の植生の把握)と変化原因の考察を行う. 4)植生変化の原因とその対応策を踏まえて,釧路湿原高層湿原地域の環境保全策を提案する.
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Research Products
(6 results)