2016 Fiscal Year Annual Research Report
里山生態系における放射性セシウム動態の将来予測と放射線防護に配慮した土地利用検討
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16H02992
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 達明 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (40178322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 輝昌 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (20291297)
八島 未和 (松島未和) 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (60527927)
近藤 昭彦 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (30201495)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福島第一原子力発電所事故 / 里山 / 放射性セシウム動態 / 生態系モデル / 山菜利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年から行なっている福島県川俣町山木屋地区の里山の放射性セシウム動態の調査を継続し、以下のようなことが明らかになった。 一年の間に森林から林外へ流出する放射性セシウム量は、全体の0.2%程度と見積もられた。その半分以上は落葉による飛散によるものだった。里山の森林にある放射性セシウムは、現在、ほとんどが林床表面に留まっている。新鮮な落葉に含まれるセシウム量は少ないが、時間がたつと次第に濃度が上昇していき、特に秋の長雨期には、急速に上昇する。林床の放射性セシウムは、有機物が分解して下層に移行しようとするが、菌類の働きによって表層に留められていると考えられる。 大部分林床にあるセシウムをコナラやミズナラなどの広葉樹は吸収しており、生育のよい樹木ほどたくさん吸っている。樹木に吸収されたセシウムは、葉に運ばれて落葉及び林内雨によって林床に還元されるものと、樹木の体内に留まるものに大別されるが、林床にある放射性セシウムの1%弱が吸収され、循環していた。このうち木材に留まるものが、総吸収量の約20%だった。事故当時1000kBq/m2の放射性セシウムが降下沈着した林では、2016年春のコナラの辺材の放射能密度が400~920Bq/kgだったが、晩秋には平均で1.23倍増加した。 山菜・キノコを調理することによって放射性セシウムをどの程度除去できるか実験的に検討した。コウタケを茹でることによって放射性セシウムを22%に、味付け煮によって14%に、塩漬けによって3%に、塩漬けして塩抜きすると1%に減少できた。他のキノコも同様に減セシウムできた。タラノキの芽は、茹でることによって50%、塩漬けによって10%に減セシウムできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度計画1に関しては、2つの対象区域の放射線量分布を測定し、山木屋GISを更新した。 計画2に関しては、森林の放射性セシウム動態が把握され、畑の概要が把握された。水田、草原については、今後行う予定である。 計画3については、目的とする生態系モデル構築のための基盤が整った。 計画4については、山菜・キノコの調理による放射性セシウム減少効果も把握され、住民にとって有用なデータが得られた。 以上のように順調にデータが取得できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
設定した里山小流域の空間線量の面的把握を継続し、「山木屋GIS」の情報を更新する。モデル試験地の観測を継続し、放射性セシウムの動態を監視する。 小流域を、森林、畑、水田、草原、住宅地に区分し、それぞれの場所の放射性セシウムの存在様式を比較し、空間的な移行しやすさや植物への利用されやすさを評価する。同時に、炭素、窒素、カリウム、pHなどの状況も把握する。 以上の成果及び既存の知見をもとにして、各土地利用要素の放射性セシウム動態モデルを作成し、将来予測を行う。また、森林管理や土地利用の変更を行なった場合の放射性セシウムの挙動についてコンピューター実験を行う。 これらの結果を用いて、土地利用についてワークショップを行い、より健康で、持続性の高い地域の将来像について、住民とともに検討を行う。
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Research Products
(8 results)