2017 Fiscal Year Annual Research Report
里山生態系における放射性セシウム動態の将来予測と放射線防護に配慮した土地利用検討
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16H02992
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 達明 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (40178322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 輝昌 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (20291297)
近藤 昭彦 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (30201495)
八島 未和 (松島未和) 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (60527927)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福島第一原子力発電所事故 / 里山 / 放射性セシウム動態 / 生態系モデル / 外部被ばく / 内部被ばく |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年から行なっている福島県川俣町山木屋地区の里山の空間線量分布調査、放射性セシウム動態調査から次のようなことが明らかとなった。 林床に設置したリターバックの放射能の季節変化調査から、リターバック内リターの放射能濃度は時間を経るに従い増加し、5月当初可給態が多く、不可給態が17%なのが、10月には76%に増加した。リターの分解を行う糸状菌に吸収され、放射性セシウムのリフトアップが起きるとともに、有機態として取り込まれたと考えられる。 森林内での循環しやすい形態のCs137と、樹木木部や土壌に不動化されるCs137の今後の動きを予測するモデルを作成した。いずれの予測でも、今後約30年は樹木木部におけるCs137の不動化=蓄積が進行し、その後は137Csは物理的半減期に従って減少するという結果となった。今回の結果からは、今後約30年は材の汚染が進むため、椎茸原木等として木材を利用するのは当分厳しいと考えられる。 現在の行動パターンで山菜類を年に一回以下しか摂取しない生活において、追加被ばく線量は、長期目標とされている年間1mSv前後の値と推定された。震災前のように森林に頻繁に出入りしたり、山菜・キノコ類を日常的に摂取する場合は1mSvを上回る可能性がある。外部被ばく線量は追加被ばく線量の7割以上であり、被ばく線量は外部被ばくによってより左右される。 震災前のように個人で採取をする山菜やキノコ類を摂取する場合、内部被ばくのリスクも高まる。しかし、山菜・キノコ類をふくめた食事を一食分取り入れた場合の内部被ばく線量の増加は、全く食べない場合に比べ、約5μSvと微増であるため、催事などで旬を楽しむために、年に数回程度取り入れるのであれは、被ばくリスクに大きな変化はないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
里山の放射性セシウム動態に関する生態系モデルが作成できたため。空間線量マップと質問票調査からの外部被ばく量評価、陰膳調査と質問票調査からの内部被ばく量評価を行うことができ、それらの成果をもとに住民説明会を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
原則的に、H29年度の調査を継続するとともに、林地での不動化プロセスを現地実験の手法で明らかにすることを目指し、里山の放射性セシウム動態に関わる生態系モデルの精度をあげる。 H30年度はまた、森林産の堆肥の利用による土壌の放射能と作物への移行状況の変化について、現地調査と実験による研究を行う予定である。 従来の成果をもとにワークショップを行い、適切な土地利用計画について検討を進める。
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