2018 Fiscal Year Annual Research Report
里山生態系における放射性セシウム動態の将来予測と放射線防護に配慮した土地利用検討
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16H02992
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 達明 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (40178322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 輝昌 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (20291297)
近藤 昭彦 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (30201495)
八島 未和 (松島未和) 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (60527927)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福島第一原子力発電所事故 / 里山 / 放射性セシウム動態 / 生態系モデル / 除染後農耕地土壌 / 肥沃度回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年から行なっている福島県川俣町山木屋地区の里山の空間線量分布調査、放射性セシウム動態調査から森林の放射性Cs の現存量に対して各フラックス要素の配分がどのように決定されているのか分析した。以下にt 年における不動化量It(kBq/m2)、循環量Yt(kBq/m2)、洗脱量At(kBq/m2)、落枝による樹体付着成分の林地供給量Lt(kBq/m2)の関係式を示す。なお、以下で用いられる数値は全て2011 年3 月基準で半減期補正したものである。 It=Yt-1-Yt+At+Lt 137Cs 循環量Yt は、2014 年から2016 年までほぼ一定の割合で減少した。この結果から放射性137Cs 循環量は、不動化によって毎年徐々に減少するが、今後も長期にわたって森林内を循環することが考えられる。なお、137Cs 洗脱量At は循環量に比べ急速に減少したが、137Cs 不動化量It は緩やかに減少した。 除染処理区では、林床処理後の 2014 年に林内雨137Cs 量、リター フォール137Cs 量ともに対照区に比べて大幅に減少し、林内雨137 Cs 量はその後も減少したのに対し、リターフォールの広葉の137Cs 濃度が 2015 年から 2017 年にかけて増加し、全体として137Cs 循環量は増加した。その 原因として、いったん除染された林床に再び汚染されたリターが集積して有機物層が次第に再形成され、有機物層を通して放射性セシウムの吸収量が増加し、不動化量を上回っていったためと推察される。 このほか、農耕地除染による肥沃度低下の状況、緑肥投入による土壌炭素蓄積、窒素循環および土壌養分に対する効果、緑肥の分解特性などについて研究が進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
里山の放射性セシウム動態に関する生態系モデルによる将来予測の検討ができたため。除染農耕地の肥沃度回復についても研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年まで継続した空間線量とリターフォールと林内雨の放射性セシウム放射能調査に加えて、2015年と2016年に測定した土壌の放射性セシウム分布、樹幹樹皮と木部の放射能、樹幹流の放射性セシウムの測定を2019年は行い、3か年間の変化を把握し、作成した放射性セシウム動態モデルのパラメーターを正確に算出し、予測を可能にするとともに、森林の対策について提案し試行する予定である。 農耕地についても、緑肥投入による肥沃度および微生物相の回復状況を把握し、対策を提案する予定である。
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Research Products
(8 results)