2016 Fiscal Year Annual Research Report
下水汚泥の嫌気性消化高効率化に資する土着PHA蓄積菌を活用した汚泥改質技術の開発
Project/Area Number |
16H03000
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
井上 大介 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70448091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清 和成 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80324177)
澤田 和子 北里大学, 医療衛生学部, 特別研究員 (00772485)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バイオマス利活用 / 下水汚泥 / ポリヒドロキシアルカン酸 / 嫌気性消化 / 微生物解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、下水汚泥の嫌気性消化を高効率化させる革新的な汚泥改質技術として、下水汚泥中に生息するRhodocyclaceae科のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)蓄積菌を活用し、PHA含量を短期間で大幅に高める技術の開発を目指し、課題1『下水汚泥中におけるRhodocyclaceae科PHA蓄積菌の分布解析』、課題2『Rhodocyclaceae科PHA蓄積菌のPHA蓄積特性の評価』、課題3『Rhodocyclaceae科PHA蓄積菌を活用した下水汚泥の迅速PHA高含量化の検討』、課題4『PHA高含量化汚泥のメタン生成ポテンシャルの評価』の4つの検討課題に取り組んでいる。 平成28年度には、課題1、課題2、課題4に取り組んだ。課題1『下水汚泥中におけるRhodocyclaceae科PHA蓄積菌の分布解析』では、GenBankに登録されたRhodocyclaceae科細菌のドラフトゲノム情報から得たPHA合成に関与するphaC遺伝子の塩基配列と、純菌を用いて独自に決定した同遺伝子の塩基配列を基に、特異的に検出するPCRシステムの開発を進めた。課題2『Rhodocyclaceae科PHA蓄積菌のPHA蓄積特性の評価』では、既往研究で下水汚泥やそれに由来するPHA蓄積集積系で検出された実績のあるRhodocyclaceae科細菌(特に、Azoarcus属、Thauera属、Zoogloea属)を対象として、純菌を用いたPHA蓄積特性の評価を行い、ピルビン酸や乳酸等が好適なPHA合成基質であること等を明らかにした。課題4『PHA高含量化汚泥のメタン生成ポテンシャルの評価』では、一般的な下水汚泥中における有機物含有量や、タンパク質、炭水化物等の割合を明らかにするとともに、バイアル瓶レベルでの嫌気性消化実験を行うための回分実験系を構築を進めた。 また、本研究に関連する成果の一部を学会発表2件として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Rhodocyclaceae科PHA蓄積菌を特異的に検出可能なPCRシステムを開発するためのドラフトゲノムデータからのphaC遺伝子配列の抽出に想定以上の時間を要したため、『下水汚泥中におけるRhodocyclaceae科PHA蓄積菌の分布解析』が当初計画よりも遅れた。また、『PHA高含量化汚泥のメタン生成ポテンシャルの評価』に関しては、使用予定であったガスクロマトグラフシステムの不調等の問題により新規購入が必要となったため、当初予定していた通常の下水汚泥のメタンガス生成ポテンシャルの評価が完了しておらず、若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は以下の実験的検討を進める。 課題1『下水汚泥中におけるRhodocyclaceae科PHA蓄積菌の分布解析』では、PCRシステムを完成させ、複数の下水処理方式の汚泥中におけるRhodocyclaceae科PHA蓄積菌の分布解析を実施する。解析に使用する下水汚泥は既に採取済であり、PCRシステムが完成し次第、成果を得ることが可能である。課題2『Rhodocyclaceae科PHA蓄積菌のPHA蓄積特性の評価』では、初年度の検討を継続し、特にRhodocyclaceae科PHA蓄積菌(Azoarcus属、Thauera属、Zoogloea属)によるPHA蓄積に及ぼす各種因子の影響と、優れたPHA蓄積能を発揮するための条件の推定を目指す。課題3『Rhodocyclaceae科PHA蓄積菌を活用した下水汚泥の迅速PHA高含量化の検討』では、①Rhodocyclaceae科PHA蓄積菌を集積せずに下水汚泥のPHA含量を直接高める方法と、②短期間でRhodocyclaceae科PHA蓄積菌を優占化させた汚泥を用いたPHA高含量化の2パターンについて、それぞれの適用可能性を検討する。課題4『PHA高含量化汚泥のメタン生成ポテンシャルの評価』では、PHA含量の異なる複数の下水汚泥を用い、中温及び高温での嫌気性消化実験を実施する。本検討の実施に必要な分析装置は前年度に入手済であり、速やかに実施可能な状態である。 また、平成29年度は、国内外での学会発表に加えて、学術雑誌への投稿も積極的に行い、国内外での情報発信に努める予定である。 これらの研究計画を遅滞なく遂行するため、平成29年度からは、関連研究に実績を有する大阪大学の池道彦教授と黒田真史助教に研究分担者として新たに参画頂くとともに、平成28年度に研究分担者であった北里大学の清和成教授にも引き続き連携研究者として参画頂く。
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Research Products
(2 results)