2017 Fiscal Year Annual Research Report
Design of biomass dye sensitizing wide wavelength and improvement of performance of dye-sensitized solar cells using squid ink composite electrode
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16H03001
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
上野 孝 函館工業高等専門学校, その他, 教授 (10310963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 秀紀 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00251025)
湊 賢一 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 准教授 (40435384)
松浦 俊彦 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50431383)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 色素増感太陽電池 / バイオマス色素 / イカ墨色素 / カビ産生色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規に導入した中空糸膜を用いる限外ろ過法により、目詰まりを起こすことなく、約200nmの精製イカ墨色素粒子の懸濁液を、これまでの5倍以上の容量で回収することができるようになった。この中空糸膜は多数の分画分子量を選択できるので、酵素などを用いて微細化した様々な粒子径のイカ墨から10nmオーダーの粒子のみを分離することが期待できる。 カビの色素の高濃度生産を目指し、検討した結果、(a) 最適な炭素源としてスクロースが、窒素源としてペプトンが選抜された、(b) C/N比が色素生産量に大きく影響する、(c) Mg塩やP塩は色素生産を促進する、ことが明らかとなるとともに、培地の最適化に成功し、色素を安定して高濃度に生産できた。また、生産した赤色色素のチタニア電極への吸着には、初発pHが重要な因子であることを明らかにした。 チタニアにイカ墨色素を吸着させながら、反射率の測定を行った結果、染色時間が長くなるにつれて反射率は減少し、24時間以上でほぼ一定となった。これにより光電極への色素吸着量と反射率の関係を見出すことができた。交流インピーダンス測定装置を用いて抵抗を測定した結果、ルテニウム錯体に比べイカ墨色素を用いたデバイスは一桁程度抵抗値が高かった。これらの結果はイカ墨色素粒子の表面で光が吸収され、内部は電子移動の抵抗になっていることが示唆される。 イカ墨色素とカビ産生色素の2種類のバイオマス色素がチタニア電極に同時に吸着する条件を見出すために、ゼータ電位を計測した。その結果、コウイカのイカ墨色素粒子のゼータ電位は-50.33 mVとなり、負に強く帯電していることが明らかとなった。これは水に分散させたイカ墨色素粒子が単分散状態になることを裏付ける結果である。この知見は水晶振動子マイクロバランス法(QCM)を用いた吸着速度を計測するための補正係数の算出に役立つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで使用していた平膜の限外ろ過モジュールは非常に詰まりやすく、頻繁に膜の洗浄を行っていた。新規に導入した中空糸膜モジュールはまったく目詰まりすることなく、連続的に非常に純粋な精製イカ墨色素粒子を回収することができるようになった。膜の孔径を小さくすることで約200 nmの精製イカ墨色素粒子から10nmオーダーの粒子のみを分離することが期待できる。 色素増感太陽電池の高性能化に必要なカビの色素を、高濃度で生産できる最適培地の設定をおこなうと伴に、生産した赤色色素のチタニア電極への高効率な吸着条件を見出すことができた。 チタニアにルテニウム錯体あるいはイカ墨色素を吸着させたデバイスにおける反射率を測定することで色素の吸着量評価法を確立することができた。イカ墨色素を用いることによって、非常に抵抗の高いデバイスになることがわかった。抵抗値を下げて、光吸収で生成した電子をチタニア電極に受け渡すには、イカ墨色素の粒子径を10nmオーダー程度の大きさにすることが必要であると思われる。 イカ墨色素粒子のゼータ電位を計測し、負に強く帯電していることが明らかとなり、吸着速度を正確に求めるための基礎的知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
孔径の異なる中空糸膜モジュールを使用することで、酵素などを用いて微細化した様々な粒子径のイカ墨から10nmオーダーの粒子のみを分離することを試みる。200nmの精製イカ墨粒子はチタニア電極の多孔性の増大に利用し、その約10分の1のイカ墨粒子を多孔質体内に吸着させて発電することを目指す。 初発pH等を最適化することで飛躍的に向上した色素濃度とチタニア電極への吸着力をさらに高め、特に長波長側の光電変換効率を向上する最適培養条件を追及する。 反射率測定による色素吸着量評価については、光電極への色素吸着量に対するデバイスの発電効率から最適な色素吸着量を評価していく。交流インピーダンス測定による、デバイス抵抗の最小化については、イカ墨のイオン化ポテンシャルを測定し、エネルギーレベルが最適な光電極材料を精査すると共に、10nmオーダーのイカ墨色素粒子を用いたデバイスの発電効率の向上を目指す。 イカ墨色素とカビ産生色素の2種類のバイオマス色素がチタニア電極に同時に吸着する最適な方法を見出す。 以上の方策を体系的に共同で実施し、短波長の光吸収に優れたイカ墨色素と長波長の光吸収に優れたカビ産生色素を共増感させることで、持続可能なクリーンエネルギーを生産するバイオマス色素増感太陽電池を開発する。
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Research Products
(4 results)