2016 Fiscal Year Annual Research Report
高レベル放射性廃棄物地層処分の合意形成での手続き的・分配的公正機能の日欧比較
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16H03011
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
広瀬 幸雄 関西大学, 社会安全学部, 教授 (10117921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 英昭 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 部長 (70421633)
大沼 進 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80301860)
大友 章司 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (80455815)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高レベル放射性廃棄物 / 地層処分 / 手続き的公正 / 信頼 / 無知のヴェール / NIMBY / シナリオ実験 / 国際比較調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な研究成果は以下の2つである。 1.HLW地層処分のサイト選定を進めるスイスを取り上げ、実施主体のNAGRA及びスイス工科大学の社会科学専門家を訪問し、ヒアリング調査及び基礎資料収集を行った。その結果、スイスでは、特別計画策定の際、自分の地域の安全性に関する属性を知らない無知のヴェール状況で、安全性を第一優先に地質学的条件で候補エリアが絞り込む方式のサイト選定プロセスを決定したが、州レベルでの住民投票(拒否権)をなくすことを決定する際の手続き的公正さは十分でなかったことを確認した。一方、候補エリアに選ばれたことへの反発が少ないのは、サイト選定において地域会議で市民の発言機会やその反映プロセスが存在すること、自国の技術力や専門家への信頼が高いことなどによることを確認した。 2.高レベル放射廃棄物の地層処分の候補地の選定方法が、手続き的公正や決定受容に及ぼす影響を検討することを目的としたシナリオ実験を実施した。本研究では、科学的要件群、公募群、社会経済的要件群、科学的要件と社会経済的要件の両方の群の4つの選定方法を設け、国、都道府県、市町村といった当事者性の異なる水準で比較することで、手続き的公正や決定受容の評価における選定方法の違いがNIMBY側面に及ぼす作用について、選定方法(4条件)×当事者性(3条件)を操作したweb上のシナリオ実験を実施した。主な結果として、手続き的公正については、当事者性の主効果が確認された。決定受容については、選定方法×当事者性の交互作用が確認された。手続き的公正と決定受容のいずれにおいても、国で評価が高く、市町村で評価が低いというNIMBYの側面が強く生じていた。ただし、決定受容においては、選定方法によりその側面が緩和されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度に行うスイスでの社会調査が可能となるように現地での聞き取り調査が実施できたこと、今年度計画通りにスイスでの社会調査が実施できるようになった。 および地層処分の社会的受容に及ぼす要因分析のためのシナリオ実験を実施し、実験の基本的な枠組みを確定できたことで、今年度さらに要因の分析のための実験をすることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
スイスにおける高レベル放射性廃棄物の地層処分立地の選定プロセスについての聞き取り調査を実施できたので、スイスにおける受容の主要な規定要因についての仮説を提示したうえで、 今年度のスイスでの聞き取り調査をもとに、地層処分の社会的受容を規定する要因を解明するための社会調査を実施する予定である。 さらに、無知のヴェール状況における地層処分立地受け入れを規定する要因を解明するシナリオ実験も実施する予定である。
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Research Products
(10 results)