咀嚼振動の周波数成分が食感におよぼす影響

2016 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 16H03030
• Research Institution: Gifu University
• Principal Investigator: 西津 貴久 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (40228193)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 勝又 明敏 朝日大学, 歯学部, 教授 (30195143) ; 勝野 那嘉子 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (20743892)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 咀嚼振動 / 破砕性食品 / 官能評価 / ピエゾフィルム / 米菓

Outline of Annual Research Achievements

破砕性食品の咀嚼信号の取得・解析および解析結果に基づく入力用信号の加工方法の検討，およびピエゾフィルムと振動子を組み込んだ予備実験用口腔内装置の設計・試作を行った．詳細は以下の通り．
1) 咀嚼信号検出実験と入力用振動信号の作成
研究協力者から提供された10種類の米菓（おかき，せんべい）について，20人のパネルによる官能評価を行った．まず多次元尺度法を用いて米菓間の類似度の推定を行った．さらに評価の言葉出しを行い，14種類の評価用語を選定し，採点法による官能評価を行った．購入したテクスチャーアナライザーのプランジャー部にピエゾセンサーを貼付し，プランジャーの移動量と試料の破砕振動の同期を取って記録できる咀嚼振動検出装置を試作した．10種類の米菓を試料として振動検出装置により仮想的な咀嚼振動を測定し，周波数領域および時間領域解析を行った．この結果と官能評価の結果から，カリカリ感はスパイク状振動の振幅と相関する傾向を見出した．また次項で述べる口腔内装置への入力のために特定の周波数領域をカットした振動信号の作成も行った．
2) 口腔内装置の設計・試作
咀嚼時の振動を検出するためのピエゾフィルムと振動を与える小型振動子について，研究協力者の協力を得て市販品を集め，振動検出と振動知覚が可能な装置の選抜を行った．さらにそれらのピエゾフィルム検出信号の増幅と振動子の駆動のためのアンプの設計と試作を行った．岐阜大学2名，朝日大学1名の印象を取り，口腔内装置の基礎部分（シーネ）を作製し，それにフィルムと振動子を組み込んだ口腔内装置を作製した．これを実際に口腔内に装着し，テクスチャーアナライザーで測定した信号や，ピエゾフィルムで検出した信号を振動子に入力することで，振動を感知させることに成功した．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成28年度の実施計画の2つの項目のうち，「咀嚼信号検出実験と入力用振動信号の作成」については，測定系の整備，測定したデータから口腔内装置入力用の振動信号の作成方法の開発，そして供試試料の選抜と官能評価と解析方法の検討を中心に計画時の主たる目標を達成した．もう一つの項目「口腔内装置の設計・試作」については，測定系の開発・整備，測定法の開発を中心に計画時の目標をすべて達成した．

Strategy for Future Research Activity

1) 食品モデルによる口腔内装置評価実験と官能評価実験
サクミのない食品モデルを咀嚼中に前年度に試作した口腔内装置を動作させたときの官能評価と破砕性食品モデルを咀嚼したときの官能評価を行い，両結果を比較検討する．被験者は岐阜大学および朝日大学の学生（100名）を予定している．あわせて被験者へのダメージ評価を行い，問題点の抽出と改良法の検討を行う．

2) 入力用振動信号データベースの作成と駆動制御ソフトウェアの試作
振動由来の食感を特徴とする食材を分類整理し，それぞれの咀嚼振動の測定と官能評価実験から食感の支配的因子を決定し，前年度の確立した手法により装置入力用の振動信号データベースを作成する．食材の種類別に破断・破壊モードの物性測定とピエゾフィルムによる検出パターン測定を行い，振動信号のタイミングと振幅の決定方法について検討する．この結果に基づいて，ピエゾフィルムの検出信号とデータベースをもとに振動子を駆動制御するソフトウェアの試作・開発を行う．