2018 Fiscal Year Annual Research Report
コンテキストベースの問いが駆動する21世紀型科学教育実践モデルのデザイン
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16H03063
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中山 迅 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (90237470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猿田 祐嗣 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 部長 (70178820)
鈴木 誠 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (60322856)
松原 憲治 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 総括研究官 (10549372)
山本 智一 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (70584572)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文脈ベース / 科学教育カリキュラム / 科学教育実践モデル / 問いベース / 教員養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際数学理科教育動向調査(TIMSS)の論述回答について,TIMSS2011と2015で同一課題として出題された「水と油」課題に着目して回答分析を実施した。TIMSS1995理科の小学校「スープ課題」及び中学校「懐中電灯課題」に対する日本とオーストラリアの児童・生徒の回答を,アーギュメント・スキルの観点で分析・比較した。主な結果として,日本には「主張」を用いる児童・生徒がほとんどいなかったが,オーストラリアの児童・生徒の約2割は理由を説明する際に再度,主張を述べていることが明らかになった。 海外の動向については,フィンランドで出版されたWSOY社の中学理科教科書2冊の分析結果を基に,大学入学資格試験生物における資質・能力ベースの分析を,「フィンランド7つのコンピテンス」を基に実施した。 コンテキストベースの学習内容として,教科横断的取り組みについて積極的に議論されてきたSTEM教育に着目しつつ,資質・能力の育成の整理を進めた。また、開発途上国のコンテキストにおける理科教育の実践と理論研究の動向を整理して論文にまとめた。 国内では,教員養成における模擬授業において,コンテキストベースの理科授業を学部学生に実施させる試みを引き続き実施した。そして,学生が教師の視点だけでなく学習者である児童の視点に気づくことができるようにする支援のあり方について,その成果をASERA2018に発表した。さらに,熟達教員の授業分析を実施して,その発話の特徴について小学校と中学校について発表した。また,コンテキストベースの理科授業の具体的な実践モデルの開発について学校現場の教師と共同で実施し,小学校における実践事例と中学校における実践事例を報告して,学習指導要領に準拠した理科授業に多様な文脈を取り入れるためのモデルを提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度から取り組んできた,熟達教師による理科授業における発話の特徴分析については,小学校と中学校での分析によって,事例的にではあるが特徴を明らかにしてその成果を発表した。 国際数学理科教育動向調査(TIMSS)に関する分析については,児童・生徒のアーギュメントスキルに注目した分析を進めてきている。つまり,主張を行う際に「事実」と「理由付け」を組み合わせて説得力のある説明を行う能力についての日本の児童・生徒のこれまでの具体的な姿を明らかにしつつある。日豪比較などの結果からは,日本の児童・生徒は,説明において「主張」をはっきり述べない傾向が見いだされている。コンテキストベースの理科授業の実践モデルの開発においては,児童・生徒が,科学的な問題解決や探究活動によって見いだした科学法則などの科学的知識を活用して,日常的な文脈などでの説明活動を行うような授業構成のモデルを提案してきた。それに基づいた小中学校の授業実践や,教員養成系の学生による模擬授業では,それが実施可能であることが事例を通して確認されつつある。 国際的な調査に関しては,フィンランド理科教科書【生物編】(2015 第3刷)中の練習問題の分析(1.一問一答形式 2.記述式3.作図,図示 4. 選択式,正誤 5.実験,観察 6.その他への分類)結果の文章化を試みており,これについては引き続き実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
熟達教員による優れた理科授業の特徴の分析については区切りをつける。しかし,国際数学理科教育動向調査(TIMSS)の論述回答におけるアーギュメントスキルの分析は,分析対象課題をさらに広げて,引き続き行い,証拠と理由づけを伴った主張による科学的説明についての日本の児童・生徒の能力についてさらに明らかにする。そして,PISAやTIMSSで出題された理科問題について,国際的に通用する資質・能力が出題された問題において必要とされる科学的能力のあり方を引き続き,明らかにする。そして,その知見を具体的な小学校や中学校理科授業におけるコンテキストベースの理科授業の実践モデルの開発に生かす。また,新学習指導要領に「プログラミング教育」が導入され,理科授業でもその試みが重視されることから,児童・生徒によるプログラミング活動を伴う内容を理科授業における文脈として位置づける効果的な方法について,実践的な取り組みによって明らかにする。 フィンランドにおけるコンテキストベースの教育の分析については引き続き実施して,練習問題の分析結果を整理すると同時に、大学入学資格試験の問いとコンピテンスとの関係について、簡単にまとめていく。 また,教科の統合の各度合いについて、実際の授業実践における問いを収集・開発・分析を行う。特に、現代的な諸課題に対応する資質・能力を育成するために、最も統合的な段階である”Transdisciplinary“アプローチにおける本質的な問い等の問いについて検討を進める。
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