2017 Fiscal Year Annual Research Report
学生のアカデミックな意志決定を支援する教学IR情報提示システムの開発と評価
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16H03082
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松田 岳士 首都大学東京, 大学教育センター, 教授 (90406835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 伸彦 首都大学東京, 大学教育センター, 准教授 (10534612)
重田 勝介 北海道大学, 情報基盤センター, 准教授 (40451900)
渡辺 雄貴 東京工業大学, 教育革新センター, 准教授 (50570090)
加藤 浩 放送大学, 教養学部, 教授 (80332146)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教学IR / 自己管理学習レディネス / アカデミックな意志決定 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,教学IR情報を用いた学生支援を目的として,大学生活を通じて学生が直面する具体的かつ真正性のある意志決定場面(初年次の科目選択・リメディアル科目の受講・所属研究室決定・留学)に注目し,判断に必要な情報を直接学生に提供するシステム,Decision Support with IR(以下DSIR)を開発・評価するものである.平成29年度は,四場面のうち,初年次の科目選択(およびリメディアル科目の受講)を支援するシステムを,履修授業推薦システムとして開発し,実際に研究代表者本務校のシラバスデータを用いて動作を確認した. 平成29年度は,システム内のデータ処理アルゴリズム,特に学生のSDLRSと科目自体のデータのマッチング方法,表示されるデータが増えることによるインターフェースの工夫,システム管理者が修得できるユーザの操作データなど,設計にあたって考慮すべき案件が多数あり,代表者・分担者の間で担当研究分野を細かく割り振って,前年度を上回るペースで打ち合わせを重ねながら研究プロジェクトを進めた.設計協議の中で,パイロット版の形成的評価において学生から指摘された,表示される用語の意味が理解しにくい点や,単位の取りやすい科目推薦システムになってしまうのではないかという懸念を払しょくするため,用語の説明文を表示できる仕組みや,学生が獲得したい能力に基づいた推薦機能などを新たに追加した.また,研究成果としてまとまった知見は,システム完成を待たず,随時発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は,平成29年度末までに以下のような進捗を見せており,年度初めの目標としていたシステム開発に至っているため. 平成28年度までに,本科研の研究グループはSDLRSアンケート実施およびその結果の可視化機能,シラバス内容表示機能を備えたDSIRのパイロット版を開発しており,これをベースに,インターフェース等は基本的に継承することとして,平成29年度開発するシステムを設計した.結果的に,多数のシラバスデータを収納でき,具体的な推薦科目をスマートフォンに表示するシステムとしてDSIRが開発された.年度末には,研究代表者所属大学のシラバスデータを使ってシステムの作動テストを行い,平成30年度初頭の実証実験に備えた. ユーザ(学生)は,DSIRを以下のような手順で使用することになる.1)ログインしてSDLRSアンケートに回答する,2)レーダーチャートとして表示されるレディネス(SDLRSの因子に対応した7項目)をチェックし,それをもとに,今学期の目標(伸ばしたいSDLRS)を入力する,3)科目と学生のレディネスとの相性マッチ度,および学生が設定した目標とのマッチ度を元に推薦科目のランキングが2種類表示されるので,それを参考にして履修科目を選択する.開発されたDSIRでは,2種類のアルゴリズムに基づくデータ処理機能が実装されている.開発にあたって,シラバスのトピック分析と評価内容から,各科目が要求するSDLRSと個々の学生のレディネスや目標として入力された能力をマッチングするために,科目シラバスデータのコーディングを工夫し,学生側のSDLRSとのコサイン距離が取れるようにした.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,本科研費による支援の最終年度であるので,前年度までに開発したシステム(DSIR)への機能追加,その効果検証を含む研究を通して,当初の研究目的を達成する計画である.具体的には,学生の協力を得て行う実証実験等で明らかになる課題に対応するDISRの改善に加えて,新たなシステム使用場面(ゼミ選択・留学)を想定した機能を追加開発し,評価する.評価では,学生に提示する情報の信頼性(予測の的中率)やシステムのユーザビリティ以外にも,学生のメタ認知促進によって自律的な学習者として必要な自己管理学習の能力の向上,すなわち,自らの学修活動やその結果に対する自己責任の受容や主体性,探求心,将来に対する前向きな姿勢といった自己管理学習におけるレディネスが高まり,自律的に学び続ける能力を身に付けることに寄与するかも確認する.海外教育機関での検証や国際学会における発表に備えて,英語版システムも開発する予定である. これらの研究成果がまとまり次第,代表者と分担者で手分けして国内外の学会の大会や研究会において知見を発表し,最終的な研究成果を研究論文として取りまとめ,論文誌に投稿する.
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Research Products
(15 results)