2016 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の海外技術援助・協力に関する科学技術史研究
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16H03096
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
愼 蒼健 東京理科大学, 工学部教養, 教授 (50366431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 辰史 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (00362400)
宮川 卓也 東京理科大学, 工学部教養, 研究員 (00772782)
泉水 英計 神奈川大学, 経営学部, 教授 (20409973)
塚原 東吾 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80266353)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 科学史 / 医学史 / 気象学史 / 農学史 / 技術史 / 帝国 / 冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画に従って、実績の概要を示す。 実施計画(1),(2)に従い、2017年3月に韓国・全北大学にて科学文明学研究所と共同して、日韓科学史セミナーを開催し、医学、気象学、ヒストリオグラフィの問題について日韓の研究者が意見を交換した。そこで確認されたことの一つは、三木栄の朝鮮医学史研究に見られるような植民地期に成立した歴史叙述が、「戦後」日韓の医学史研究の一部に継承されているということ。そこには、科学や医学を一元的に捉え、地域差を「高低差」と見る歴史・文明観が存在する。「戦後」日本の海外技術援助・協力の歴史叙述を目指す本プロジェクトでは、この点を徹底的に批判し、日本中心主義的な「開発論」と一線を画すだけでなく、「開発論」的叙述を全面否定した新たな叙述を構築しなければならない。初年度は非常に大きな問題だが、本プロジェクトが目指す歴史叙述のあり方を問うことができた。 さらに、実施計画(3)に従い、各班ごとに文献調査を実施した。特に<沖縄と韓国の結核対策>、<沖縄と韓国の気象観測システムの初期構築>に関しては、アメリカ主導という従来の叙述とは異なる視点が提供しうる資料の発見があった。例えば、韓国の気象観測ではアメリカの影響が強く指摘されてきたが、戦後の京都大学に韓国人の学位論文があることを発見した。「戦後」日本の気象学が韓国の気象学にどのような影響を与えたのかを考える一つの手がかりとなるであろう。今後の研究を進める上で一定の成果があったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は資料調査に重点が置かれており、分担者により調査の進展には差があるものの、おおむね順調だと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、各班はテーマに即して資料調査を進めていく。 1【医学班】敗戦直後の沖縄医学界と制度: 次のトピックについて検討する。医療の人的物的損害、開業医再開問題、USCAR 公衆衛生局、ナショナル・リーダー米国研修プログラム、医介輔。慎と泉水が沖縄に出張し、沖縄県立図書館、沖縄県公文書館で資料調査を行う。また公衆衛生看護婦制度が生まれた高知県に 出張し、高知県立図書館で資料調査を行う。 2【工学班】1960 年代前半からの「国産化」希求:日本型原発を追求するメーカーの努力について検討するため、主に三菱と日立のプラント技 術を調査する。また、この上記期間は、日本の戦後補償が ODA に転換していく時期であり、 ダム・発電に関する研究を進める海外研究協力者と発電機をめぐる技術史研究について協力し ながら進めていく。 3【食・農学班】韓国軍における兵士の健康維持と食の問題: 保存食から離れ、韓国軍兵士の健康維持にどのような食が求められたのかについて、科学的 観点からの議論を検討する。 4【気象学班】帝国から国際気象観測の時代へ(その 2):1950 年代の国連・世界気象機関(WMO)設立後の西太平洋諸国の対応について検討するた め、宮川が現地での資料調査を行う。
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Research Products
(31 results)