2018 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の海外技術援助・協力に関する科学技術史研究
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16H03096
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
愼 蒼健 東京理科大学, 工学部教養, 教授 (50366431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 辰史 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (00362400)
宮川 卓也 広島修道大学, 人間環境学部, 助教 (00772782)
泉水 英計 神奈川大学, 経営学部, 教授 (20409973)
塚原 東吾 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80266353)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 科学史 / 医学史 / 農学史 / 気象学史 / 工学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の「研究実施計画」に照らし、班ごとにその成果を報告する。 食・農学班の開催予定であった国際会議を医学班の国際会議に切り替え、2018年11月10日に公開研究会「結核対策史の比較研究に向けて」を神奈川大学にて開催した。台湾の研究者を招聘し、日本からは結核予防会の研究者を招いて開いた研究会は、医学研究者と医学史研究者、日本と台湾の研究者が交流する機会を作り、相互の研究を検証する機会となった。また、この3年間の成果として、「アメリカ軍による琉球結核制圧事業の成功」史が見直され、同時期における韓国と琉球そしてアメリカ本土の結核政策が比較されることで、琉球におけるBCG排除の意図が判明した。今後は、アメリカ占領下の琉球と南朝鮮(やがて韓国へ)の結核政策の比較ではなく「内在的関係」、さらに日本の結核政策との関係をより明確な言語で語るよう研究を展開させていく。 工学班と気象学班は未だ大きな成果発表には至らないが、工学班は開発独裁と呼ばれるアジア諸国への原発技術輸出に関する基礎資料の収集と理論的な検討を、気象学班は戦後の広島観測所の記録(一次資料)を発見し、その読解と同時に、気象学史の戦前・戦中・戦後の連続性を検討している。その一部は口頭発表している。工学班・気象学班ともに、他の班より成果発表が遅れてるが、日本の原発技術・気象観測技術と諸外国との連携について検討を行っていく。 食・農学班は保存食の歴史をやや迂回し、戦後のGHQ占領から学校給食法制定までの歴史を先行的に研究し、その成果を口頭発表だけでなく図書として刊行した。今後は、当初の計画にある保存食との関係、そして給食・保存食の「輸出」現象について考究していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初本年度計画に含まれていた資料調査の一部に未遂のもの、あるいは調査の断念はあったものの、4年目の国際会議報告に向けた準備はほぼ整い、すでに2019年・国際東アジア科学史会議に二つのパネルを提案し、アクセプトされている。また、医学班研究の一部を構成する「アメリカ施政下琉球の結核制圧事業」、食・農学班研究の一部を構成する「保存食・給食の歴史」に関しては、その成果を学会発表、論文、図書の形で発表したため。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」において説明したが、現時点で最も成果をあげている医学班は、「比較」から「関係」へと議論を進める必要がある。アメリカ占領下の琉球と南朝鮮(やがて韓国へ)の結核政策の比較ではなく「内在的関係」、さらに日本の結核政策との関係をより明確な言語で語るよう研究を展開させていく。冷戦と東アジアという大きな枠組みから、結核史を捉える視点を打ち出していくために、冷戦研究とも交流を深める必要があるだろう。 食・農学班は、給食に存在する保存食、さらに視点を広げて戦後の典型的保存食が、工学班・気象学班も敗戦後状況が、知と技術「輸出」へと転じるポイントの前後史へと議論を進めていくことになるだろう。
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