2016 Fiscal Year Annual Research Report
年輪幅・酸素安定同位体比標準年輪曲線ネットワーク構築とそれに基づく木材産地推定
Project/Area Number |
16H03098
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大山 幹成 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (00361064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 安治 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50644481)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 年輪年代学 / 木材産地推定 / 年輪幅 / 標準年輪曲線 / 安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度となる本年度は、日本列島内の試料空白地である中国地方の2か所(島根県、兵庫県)において、新たなスギ現生木年輪試料の採取を行った。試料採取は、成長錐を用いて実施し、両地点において、樹齢200年を超える優良な試料をそれぞれ20点以上収集した。これらの新規試料に加え、既収集済み試料(新潟など)についても、年輪幅計測を実施し、標準年輪曲線構築に着手した。これにより、研究計画の第一段階である九州~東北までを網羅する年輪幅標準年輪曲線ネットワーク構築の目途をほぼ立てることができた。 木質遺物については、既収集済みの江戸期のアスナロ出土木材について年輪幅計測を実施したものの、現段階では、アスナロ現生木あるいは東北地方のヒノキアスナロ埋没林から得られた標準曲線とのクロスデーティングには成功しておらず、今後、さらに精査する必要がある。また、新規の西日本産試料として、鳥取県の遺跡出土材調査の許可を得て、弥生時代に相当する年代のスギ試料について、年輪幅計測と標準年輪曲線構築を実施した。その結果、一定数の試料のクロスデートには成功したものの、得られた結果はまだ質的に不十分なため、来年度以降も試料数を増やすための調査を実施する必要があると判断された。 ヒノキ科現生試料の酸素安定同位体分析については、新たに、新潟、仙台などの試料を選定、準備し、測定に向けたセルロース抽出や年輪の切り出し、秤量作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画としては、1)試料空白地で新たなヒノキ科年輪試料を採取し、全国を網羅する年輪幅標準年輪曲線ネットワークを構築すること、2)東北日本における長期標準年輪曲線を確立すること、3)西日本における長期の年輪幅標準年輪曲線構築に着手すること、4)東日本の新たなサイトで酸素安定同位体比標準年輪曲線の構築に着手すること、を予定していた。このうち、1)については、一部未着手の地点はあるものの、最大の課題であった中国地方において、2か所のサイトから良好な試料を得ることができ、計測に着手した。また、3)についても、初年度としては、試料調査の許可、調査が比較的順調に進展した。得られた年輪データについては、予想以上に保存処理による試料表面劣化の影響が大きく、年輪が不鮮明になったり、適切に計測できない部分があり、当初想定していたよりも年代を確定できた試料の歩留まりが低下した。ただ、この西日本の新しいサイトにおいて、今後の土台となるデータを収集できたことは一定の評価をしている。4)については、試料の薄切からセルロース抽出、年輪の切り出し、秤量に至るまで、一連の手順を確立できたため、今後はスムーズにデータの生産が可能となる見込みである。 3)については、事前の試料情報から、既存の年輪データとのクロスデーティングと年代決定が可能と考えていたが、現状では、良好な結果が得られていない。この点については、さらに試料を収集する必要がある。以上のような状況から、全体としてはおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現生材の年輪幅標準年輪曲線ネットワーク構築については、試料収集は残り1か所程度にとどめ、試料計測と解析作業に重点を置く。長期標準年輪曲線構築については今後も新たな試料の探索を行いつつ、今年度得た新規データを基盤にして、着実にデータ蓄積を継続する。また、安定同位体比測定については、現在確立した手順に従って、当初計画通りに着実なデータ蓄積を継続する。これにより、3年目以降、蓄積したデータを用いて、木材産地推定に向けた解析に着手できると考えられる。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] Verification for the absolute age of an oxygen isotopic tree-ring chronology in the northern Japan based on 774-775 carbon-14 spike2016
Author(s)
Hakozaki, M., Nakamura, T., Ohyama, M., Kimura, J., Sano, M., Kimura, K., Nakatsuka T.
Organizer
The Eighth World Archaeological Congress
Place of Presentation
同志社大学(京都府京都市)
Year and Date
2016-08-29 – 2016-08-29
Int'l Joint Research
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