2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study for practical use of the technique of salvaging the genetic information existing in the rice phytolith
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16H03104
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 教授 (00253807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 克典 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (00450213)
田崎 博之 愛媛大学, 埋蔵文化財調査室, 教授 (30155064)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イネの多様性評価 / プラント・オパール / 遺伝情報の抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、残留性に優れた植物遺存体の1つであるプラント・オパールに内在する遺伝情報を取り出し活用する技術を実用ステージまで引き上げ、稲作分野の研究における一般的手法として確立することを目指している。平成29年度の取り組みと成果をまとめると以下のとおりである。 【取組1:土壌からのプラント・オパール抽出についての実用手法の構築と検証】昨年度の成果にもとづき、実用化候補の抽出工程を適用してプラント・オパールの抽出を完了することができた。なお、所用時間等については、大きな差異がないことが明らかとなった。今後、遺伝情報の増幅状況にもとづき、最も実用的な抽出工程を決定する予定である。 【比較試料として堆積環境・土性などが異なる生産遺構土壌の確保と分析】新しい追加分析試料として、群馬県高崎市の井出遺跡群における時代の明確な水田層土壌を採集確保することができた。採集した柱状土層資料の肉眼による堆積相分析を行った結果、6世紀の火山灰で埋没した水田が湛水状態にあったこと、弥生時代終末の水田層の下位に時期が遡る水田層がある可能性を明らかにした。また、これらの試料からDNA抽出用のプラント・オパールの抽出までを完了することができた。 【取組3:プラント・オパールに由来するDNA 分析技術の普及性の向上の検討】プラント・オパールに内在する遺伝情報について開発した分析手法を実用化するために、第3者による分析手法のクロスチェックならびにイネの多様性を評価できるマーカーの開発を実施した。その結果、第3者の分析初心者によって同手法によりDNAを復元できることが確認できた。また、日本の基幹品種や在来品種を識別可能なSSRマーカーを開発でき、多様性評価を実施できる見通しを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度も、当該研究の基礎となった昨年度までの挑戦的萌芽研究で構築できた人的なネットワークや分析試料の蓄積もあり、ほぼ計画どおりに研究を進めることができた。群馬県の遺跡についても予定通りに良好な分析試料を採取することができた。また、今年度の最も重要な課題であった第3者によるプラント・オパールからのDNA抽出の再現性については、無事にクリアすることができた。また、今後の発展性として、多様性マーカーを構築できた点も大きな成果と言える。なお、収集した遺跡土壌からのプラント・オパール抽出とDNA抽出については、予定が遅れ、年度度内に完了することはできなかった。 以上の状況から、今年度についてはおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、最終年度であることから、以下の3つの取組を行い、手法を完成させ、分析マニュアルとしてのまとめを行う。 【取組1:土壌からのプラント・オパール抽出手法の確立にむけた検討】昨年度までに最適な抽出工程については目処をつけることができた。そこで、今年度は、この工程を新しい試料と反復試料に適用し、さらなる改善点の抽出を行い、工程のブラッシュアップを進める。 【取組2:堆積環境・時代が異なる生産遺構土壌を対象に手法の有効性を検証】一昨年度に採取した多度津町の中又北遺跡(扇状地末端の埋没旧河道、弥生前期+古代末~中世前半)、昨年度採取の高崎市の井手遺跡群(河岸段丘上、弥生中期+弥生終末+古墳後期)に、これまで採取している奈良県中西遺跡(扇状地扇央の埋没旧河道、弥生前期)、高槻市安満遺跡(扇状地末端の埋没旧河道、弥生前期)を加え、①水田稲作が着床する弥生前期(中又北、中西、安満)の地域と土壌条件が異なる水田の比較、②弥生前期(中又北、中西、安満)、古墳後期(井出)、古代末~中世前半(中又)の時期的な比較を行う。これらの比較結果とプラント・オパールの遺伝情報の抽出状況ならびにDNA分析結果を対応させることで、手法の有効性の検証を行う。 【取組3:プラント・オパールからの遺伝情報抽出手法の確立にむけた検討】昨年度までの取り組みにより、開発した抽出手法の実用性と再現性の検証ならびに主要なDNAマーカーの開発を行うことができた。そこで、今年度は、3つの取り組み(①開発したDNAマーカーを用いたプラント・オパールのDNA分析による分析ツールの拡充、②当該手法の有効性について反復試験の実施、③プラント・オパールの採集後におけるDNA劣化の検証)を行い、遺伝情報の抽出手法をブラッシュアップする。
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Research Products
(6 results)