2016 Fiscal Year Annual Research Report
マルチカーブ環境における金利デリバティブの価格付け理論の再構築とその応用
Project/Area Number |
16H03123
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
室町 幸雄 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (70514719)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木島 正明 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (00186222)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ファイナンス / デリバティブの価格付け / 担保付取引 / マルチカーブ |
Outline of Annual Research Achievements |
マルチカーブモデルにおける一般的な価格付け理論の再構築を行った.従来は精緻に取り扱われていなかった部分について精緻に議論を展開することで,リスク中立確率の意味を明確にし,より一般的な形で価格付け公式を導出した.特に金利デリバティブに関しては,repo rateが当該金利の短期金利に相当するとみなすことで,実務で使われている定式化を株式デリバティブの場合と整合的に解釈できると提案した.また,フォワード中立化法についても,従来の成果を含む一般的な価格付け公式を導出した.それらの成果を論文にまとめ,英文学術雑誌に投稿した. 上記論文の成果をもとに,ショートレート型のツーカーブモデルを具体的に提案した.提案モデルは標準ブラウン運動による2ファクターモデルで,金利市場の現状を踏まえ,OISレートは負値をとりうるが,LIBOR-OISスプレッドは非負性を保つようにした.また,OISレートとLIBORレートの相関も考慮した.モデルの構造が単純なので,LIBOR・OIS割引債価格やFRAレートは閉じた形で,キャップレット価格は簡単な数値計算を含む形で書き下せるため,カリブレーションは容易である.数値計算により,FRAレートやキャップレット価格のボラティリティや相関係数への依存性などを明らかにした.これらの成果は第二論文として執筆中である. また,マルチカーブモデルへの適用を見据えて,室町は金利依存性のあるリスクを内包する金融商品の価格付け,木島は確率ボラティリティモデルによる価格付けとその応用についても研究を進め,それぞれに成果を得た. さらに,2016年9月から中央清算機関を通さないデリバティブ取引に対して初期証拠金の支払が課されたことを受けて,室町は初期証拠金の価格への影響を効率的に評価する手法を検討した.この問題も担保金の差入に起因するもので,マルチカーブの由来と同源である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第二論文の数値例の計算内容は単純であるが,結果の解釈がやや複雑で直感的に把握しにくかったため,論文執筆までに時間がかかってしまった.その理由は,LIBOR-OISスプレッドは理論的に非負であるべきなのでQuadratic Gaussianモデルで表現したところ,OISレートとLIBORレートの相関関係がやや複雑になったためである.しかし現在はモデルに対する理解が進んだため,順調に論文を書き進めている. また,新たに開始した初期証拠金の研究はパリ第一大学の教授との共同研究で,最新の制度変更に関するホットな議論である.当初の研究計画にはなかったが,これも広い意味でマルチカーブの議論に繋がるテーマであると考えて取り組むことにした.
|
Strategy for Future Research Activity |
既にマルチカーブモデルにおける価格付けの基本的な議論はできたので,第二論文ではショートレートモデルを扱った.今後は,フォワードモデルであるHJMモデルとの対応関係を議論し,さらにマーケットモデルについても議論していきたい. また,新たに開始した初期証拠金の研究は,現在は基礎的な段階で単純なデリバティブのみを扱っているが,今後はデリバティブ・ポートフォリオへの拡張,より複雑なモデルへの適用などの展開も見込んでいる.
|