2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H03141
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡田 成幸 北海道大学, 工学研究院, 特任教授 (50125291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 唯貴 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60557841)
和藤 幸弘 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90211680)
田守 伸一郎 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40179916)
戸松 誠 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 建築研究本部北方建築総合研究所, 研究主査 (50462338)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プリベンタブルデス / 人的被害 / 個別要素法 / 多発外傷性重症度指標 / 余命時間 / SAR / 建物被害 / 室内被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主として、倒壊建物の損傷状態から建物内での居住者の身体的状態を多発外傷重症度指標(ISS)で評価し、救命救助の可能性を判断する推定式を構築することを目的に、建物の構造破壊(建築工学)とその中での居住者の負傷状態とその死傷因(災害医療)に関する共同研究組織体制を整え研究を進めてきた。 具体的には、昨年度に引き続き1995年兵庫県南部地震、2004年新潟県中越地震、2016年熊本地震の入力地震動及び建物と室内被害データ並びに人的被害データを利用して関数構築を試行した。注力したのは建物倒壊状態を個別要素法でシミュレーションし、建物内部の被害状態を再現かつ床面への瓦礫圧力を計算し、建物内空間残存率との関係から人的被害状態ISSを推定するモデル構築を行ったことであり、実態を再現することが可能となった。 建物内での人的被害は建物倒壊のみが原因ではなく、負傷はむしろ室内散乱による場合が多い。この事実に照らし、室内散乱による負傷及び閉じ込め状態の検討も併せて行っている。これまで室内散乱に伴う危険度評価は地域単位で検討することが主であったが、本研究では住家単位での検討を目的とし、個別住家における家具の転倒・移動シミュレーションを個別要素法で実施し、避難移動可能な安全領域としての床面積減少を確認することができ、個々の世帯におけるモデル検討の道が開けた。 さらに救出活動(SAR)による救命可能性を検討すべく負傷状態での余命時間推定モデルを交通事故カルテデータを基に、死亡率を生存可能性の極値と見なすことで極値理論を応用し議論可能なことを確認した。これらの総合として、目標とすべき死傷者数の縮減値設定とそのための具体的対策(プリベンタブルデスの事前予防対策としての住家耐震化効果評価及び超急性期における事後対策としてのSARと医療行為)による減災効果評価への方途完成に向けて大きく前進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる目標はプリベンタブルデス評価モデルと関連関数群の構築にあったが、倒壊建物内での人的被害評価(個別要素法による個々の建物評価)に加え、室内散乱に伴う人的被害要因に踏み込んだ推定モデル構築に到達した。加えて、負傷状態による余命曲線を共同研究者らによる交通事故データから推定する方法(関数化)のめども付けることができ、最終年度に向けて大きく前進した。 さらに余命時間の検討に際し、救出・搬送にかかる時間を負傷程度に応じて検討する必要があることから、北海道の人口分布と北海道医療計画における災害拠点病院までの距離を算出し、具体的な対策提言に向けて基礎資料整備も新たに進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度にあたり、当初予定に加え、更なる進展を目指し以下の研究計画に従い進める。 1.プリベンタブルデス評価モデル及び評価関数群の精緻化:2カ年にわたって進めてきた建物損傷度ごとの建物内における発災時の生存者(プリベンタブルデス)の負傷程度発生確率およびその状態における余命時間推定モデル(プリベンタブルデス評価モデル)の精緻化を進める。2016年熊本地震の調査結果をふまえ、当初予定になかった、繰り返し余震による建物被害進行とそれによる居住者閉じ込め危険性評価も加え、完成度を上げる。 2.対象地域における被害評価と検証:北海道の主要都市を対象とし、想定地震に対するプリベンタブルデスの現状評価を行う。 3.減災目標の設定とそのための具体的対策による効果評価:同地域を対象とし、減災対策実施による効果評価シミュレーションを実施し、対策提言につなげる。
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