2016 Fiscal Year Annual Research Report
Risk evaluation of earthquake-induced landslides in the Nepal Himalaya and its application to local disaster preparedness
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16H03149
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
檜垣 大助 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10302019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 浩司 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (40292403)
鄒 青穎 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (40750055)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ネパール / ヒマラヤ / 隆起 / 河川侵食 / 谷中谷 / 受け盤斜面 / 崩壊 / ランドスライド |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年ネパール大地震(ネパールゴルカ地震)によるランドスライド発生個所の分布を、公開衛星画像を用いて把握した。地形解析には、RESTECの提供するAW3D数値地形データ(5mメッシュ)とASTER G-DEMを用いた。震源断層破壊域で崩壊多発が報告されている7800km2の範囲について判読した結果、約13,000個所の新規ランドスライドが発生し、そのほとんどが表層崩壊であったことが分かった。発生域1か所当たりの平均面積は1ha以下が92%を占め、発生域で見れば比較的規模の小さい崩壊であった。平成28年度は、現地状況で翌年度に繰り越して実施した地域を含め、1)トリスリ川地域、2)ゴルカ地域、3)シンズパルチョウク地域、の集中域が認められたため、これら地域で、主に崩壊発生斜面(移動・堆積域を除く)の地形・地質条件を、上記数値地形データと現地調査およびデジタル地質図によってArc GIS10.2を用いて解析した。 崩壊の発生は、低ヒマラヤ北部から高ヒマラヤに向かって起伏量が急激に増大する地域で多発し、急激な隆起と侵食による高ヒマラヤの地形形成に強く支配されたと考えられる。発生は、谷中谷の急斜面,受け盤斜面の稜線付近の凸型斜面での表層崩壊が多かった。一方で、地すべり地形の多く分布する傾斜斜面でのランドスライド発生は、滑落崖付近を除き少なかった。これらの原因として、地震発生が乾季末期で、先行降雨が少なかったことが考えられた。また、流下・堆積域を含む崩壊地全体で見ると形態的に縦長の崩壊が多いが、これもネパールヒマラヤの隆起・侵食による大起伏山地での地震による崩壊の特徴といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雨季の道路決壊等で現地調査を一部地域で翌年度に繰り越したが、現地での崩壊発生状況と地形・地質条件の調査はほぼ計画通りの成果を得た。地震発生前後の比較による衛星画像判読による地震での崩壊個所の抽出は、分布把握に非常に有効であった。また、崩壊地ポリゴンデータで扱うことで分析精度が向上した。一方、AW3D数値地形データから作成した立体地形図は微地形を良く表現しており、傾斜・斜面形や水系などの判読で地形分類が行えた。その結果から、崩壊発生個所に影響する地形要因の抽出やGIS解析スケールの決定ができた。 現地調査では、衛星画像による発生域抽出の妥当性の確認と地質図にある岩相や地質構造の確認を行えた。その結果、地質条件に関しては、広域的な既存地質図(1/50万)ではなく、崩壊の集中したシンズパルチョウク郡コダリ地域など部分的に岩相分類精度の良い地質図を用いた崩壊発生場条件の分析が適当であることがわかり、それらを用いた。 以上、当初計画にあった地震による崩壊地分布データの作成、崩壊発生の地形・地質要因の把握が行えたことから、概ね順調に進展しているとみなした。
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Strategy for Future Research Activity |
我が国では、南海トラフ地震によるランドスライド災害の多発が懸念されているが、古第三紀以前の硬質堆積岩地域での地震による崩壊発生事例は歴史地震による大規模崩壊しか知られていない。ネパールヒマラヤでの今回の地震による多数の崩壊発生場の地形・地質要因把握は、類似の地質にある四国・紀伊半島などでの地震によるランドスライド危険個所の把握に大きく貢献する。 本研究では、地形や地質構造の発達史など定性要因をも取り込めるAHP法での危険斜面評価手法を開発することで、将来的な上記地域への手法適用が可能になることを目指している。また、その中で、ヒマラヤの地形や地質構造のスケールに合った評価単位の大きさを選定する手法も示すことで、汎用性の高いものにできる。 AHP法による地震での崩壊・地すべり危険地域評価手法は、当科研課題の研究者らが新第三紀以降の軟質岩での事例解析ですでに提案している。そこでの崩壊の発生評価要因として挙げられている傾斜・起伏量・地上開度などの地形要因について、評価スケールを変えながら適用性の高い重み付けを試みる。また、谷中谷など、新たな要因の評価指標を検討している。地質については、硬質岩の受け盤、流れ盤や炭酸塩岩など日本で事例の少ない崩壊について要因評価のしかたを検討する。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Distribution map of landslies triggered by the 2015 Gorkha Earthquake, Nepal.2017
Author(s)
CY. Tsou, Chigira, M., Higaki, D., Yagi, H., Dangol, V., Amatya, S.C., Hayashi, K, and H.Kato
Organizer
The 11th Asian Regional Conference of IAEG
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