2018 Fiscal Year Annual Research Report
軟X線用ポリキャピラリレンズを用いた3次元顕微イメージング
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16H03168
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 元博 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40164256)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生物・生体工学 / 軟X線顕微鏡 / プラズマ / キャピラリ |
Outline of Annual Research Achievements |
フォーカシング・ポリキャピラリ・オプティクスを用いて「水の窓」領域の軟X線を数十μm径に集束した際、微小試料への入射位置と入射角度が僅かに異なる多光束の軟X線として照射される特性を精密に評価してイメージングする技術を開発することにより、光学顕微鏡の分解能では見えない「水分を含んだ生体細胞内の小器官」の3次元炭素分布を可視化できる超小型軟X線顕微鏡の実現を目指して研究を進めている。すなわち、ポリキャピラリ・オプティクスを軟X線の集光レンズとして用いる際に問題となる多くのX線の理想光路からの偏差を、逆にイメージングに利用しようとしている。これまでに、可視光領域では、単一点受光センサーを利用したゴースト・イメージングで光線情報の処理が行われてきたが、本研究では、CCDによる面情報検出を軟X線の領域で行い、さらにポリキャピラリ・オプティクスを用いてイメージングを実現しようとしている。具体的には、短パルスレーザー生成プラズマ(LPP)から放射される酸素(O)と炭素(C)のK吸収端間(543~284eV)の波長域2.28~4.36nmの「水の窓」軟X線をポリキャピラリ・オプティクスで集光照明・拡大投影し、細胞内小器官で起きている動的な変化を観察可能にする顕微イメージングを実現するため、昨年度、ポリキャピラリ・オプティクスを用いた軟X線顕微鏡プロトタイプの試作を行い、短パルスレーザー生成プラズマ光源からの軟X線放射強度不足を補うためにNi放物面ミラーを前置する装置改良を進めた。本年度、前置ミラーを組み込んで、ポリキャピラリ出射軟X線の試料設置領域における多光束空間伝播特性を精密に評価し、顕微イメージングの基礎データを取得して、さらに、多光束伝播特性の評価データを処理し、顕微像の再構成を試みていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ポリキャピラリ・オプティクスを用いた短パルスレーザー生成プラズマ(LPP)放射軟X線による小型顕微鏡のプロトタイプを試作したが、水を含む生体細胞内小器官を観察するための常圧部とLPP光源の真空部との圧力隔壁に用いている酸化シリコン製の薄膜窓の強度が不足しており、(1)ポリキャピラリ・オプティクスによる軟X線(波長域2.28~4.36nm)の集光照射特性、(2)試料透過後の軟X線のCCDカメラへの拡大投影特性、(3)パルスレーザー生成プラズマから放射される軟X線のポリキャピラリへの入射・出射特性、(4)顕微試料設置領域の多光束空間伝播特性の評価、(5)薄膜窓ホルダーの走査における安定性などの諸特性の取得に遅れが生じている。これらは、LPP光源装置を真空にする際の急激な圧力変動による波動伝播にも原因があったと推察されたので、新たに圧力変動を緩和するためのバッファー装置と絞りを追加設置することで薄膜窓が破損する問題を解決しようと考え、ポリキャピラリ・オプティクスを用いた軟X線小型顕微鏡プロトタイプの改良を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
試作した「水の窓」軟X線用ポリキャピラリ・オプティクスを用いた3次元顕微イメージング装置のプロトタイプに前置ミラーを組み込むことで、レーザー生成プラズマ(LPP)放射軟X線の集光照射強度不足と光軸調整の課題を解決して、LPP光源からのデブリ汚染対策を、引き続き、進めていく。さらに、LPP光源の真空部との圧力隔壁に用いている酸化シリコン薄膜窓の破損を防ぐため、真空引きの際の圧力波の減衰機構を追加設置する。このような対策を講じた後、顕微試料位置に挿入した様々なテストパターンに対するCCD各画素の相関を計算し、3次元顕微イメージングに必要な基礎データを取得して、ポリキャピラリ・オプティクスから顕微試料の各点に入射する位置と入射方向ベクトルで表現される詳細な光線情報を評価し、3次元像の再構成を試みていく。なお、テストパターンとしては、計算機で乱数を発生させて得た種々の2次元格子を集束イオンビーム(FIB)によりSiウエハ上の薄膜に転写し、試料観察位置に挿入して、ナノ・メートルで設置位置を変更し、ポリキャピラリ・オプティクスによって軟X線用CCDに拡大投影された像との相関を計算していく。また、顕微試料への集光照射側のポリキャピラリ・オプティクスについては、軟X線光源との間に種々のテストパターンを挿入することで、照明側の光線情報の評価を実施していく。
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