2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H03173
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須藤 亮 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (20407141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷下 一夫 早稲田大学, ナノ理工学研究機構, 上級研究員(研究院教授) (10101776)
三高 俊広 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50231618)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 組織工学 / 肝臓 / 血管 / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、組織工学によって再生した三次元肝組織に毛細血管網を導入する「血管化」の実現に取り組んでいる。特に、コラーゲンゲル粒子および還流培養システムを利用することで三次元肝組織の組織化および血管化を促進することを目的としている。 平成29年度は、コラーゲンゲル粒子を導入した培養による肝組織の血管化を検討するとともに、マイクロポンプの導入による還流培養システムへの拡張に着目して研究を進め、具体的には以下の項目について取り組んだ。 ①マイクロ流体システムの作製: ソフトリソグラフィーによってマイクロ流路およびコラーゲンゲルを有するマイクロ流体システムを作製する。培養の際には、マイクロ流路間に圧力差を形成することによってコラーゲンゲルを浸透する間質流を起こし、微小培養環境における対流・拡散・三次元組織化を制御した。 ②細胞配置の時間的・空間的な制御: ラットの肝臓からコラゲナーゼ灌流法によって分離した初代培養肝細胞をマイクロ流路で培養し、間質流を負荷することで三次元組織を形成した。一方、対面する流路に血管内皮細胞を播種し、毛細血管網を形成することで、三次元肝組織と毛細血管網を近接させた共培養モデルを実現した。さらに、間葉系幹細胞も同時に培養することで血管伸長が促進される現象を見出した。 ③コラーゲンゲル粒子の導入による血管化誘導効果の検討: 特定の大きさのコラーゲンゲル粒子を用いると肝細胞の三次元組織化が起こることを見出した。その一方で、マイクロ流路における組織化プロセスにおいて血管化に与える影響は限定されていた。 ④マイクロポンプの導入による還流培養システムへの拡張:還流培養システムへ拡張する前段階として培養液の酸素環境が肝細胞の形態や機能に与える影響を評価した。その結果、酸素透過膜を用いることで肝細胞の機能が向上することを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、「コラーゲンゲル粒子の導入」と「還流システムへの拡張」に着目した研究実施計画であった。コラーゲンゲル粒子については肝細胞の三次元組織化を促進することがわかった一方で、血管化への効果は限定的であった。そこで、血管化を実現するために間葉系幹細胞を用いた計画を進めたところ、血管化のプロセスが促進された。また、還流システムについては酸素環境で肝細胞の機能向上に重要であることを実証した。これらの結果を踏まえると当初の目的達成に向けておおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ流体システムを用いて三次元肝組織と毛細血管網の近接共培養モデルを構築し、「コラーゲンゲル粒子の導入」と「還流システムへの拡張」を通して血管化・組織化を誘導する。2017年度までに、コラーゲンゲル粒子を導入した培養による肝組織の培養法を確立するとともに、マイクロポンプの導入による還流培養システムへの拡張を開始した。そこで、2018年度は還流培養システムにおける血管化組織の構築と、血管化複合組織における細胞極性や機能発現の検討を進め、三次元肝組織の組織化・血管化を促進する組織工学的手法に明らかにする。
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Research Products
(13 results)