2016 Fiscal Year Annual Research Report
胎生臓器ニッチ法を用いた自己腎臓前駆細胞由来腎臓再生法の開発
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16H03175
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
横尾 隆 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70301538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 嘉延 日本大学, 工学部, 准教授 (80339267)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腎臓再生 / iPS細胞 / 間葉系幹細胞 / 胎生臓器ニッチ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、発生段階にある子宮内胎児の臓器発生部位(胎生臓器ニッチ)に発生時期に合わせて臓器前駆細胞を注入し、臓器初期発生のプログラムを遂行させることにより各臓器系譜に分化誘導を行う「胎生臓器ニッチ法」を開発した。現在までにラット胎仔の腎臓発生部位(胎生臓器ニッチ)にヒト間葉系幹細胞を注入し、胎仔体内で腎臓系譜に分化させることで尿生成などの腎機能を獲得した再生腎の樹立に成功している。しかし現行の方法では異種細胞とのキメラ臓器になってしまう問題がある。そこで今年度はもっとも外来細胞由来腎臓のキメラ部分が多くなるように、間葉系幹細胞より腎臓系譜に分化しやすい幹細胞(腎臓前駆細胞)の探索を行なった。現在iPS細胞から腎臓前駆細胞への分化誘導法は3法報告があるため、この3法を用いて我々の樹立した健常人のiPS細胞から腎臓前駆細胞の樹立を試みた。その結果いずれの細胞も高効率に腎臓前駆細胞に分化誘導することに成功したが、臓器ニッチに極細針で注入する目的には、細胞塊(sphere)を介さず容易にsingle cellにする必要があり、3法なかで一つのみ活用できることがわかった。さらに以前の研究で長期透析患者由来の間葉系幹細胞は腎臓再生能力が劣っていることがわかっているため、今回改めて長期透析患者由来iPS細胞を樹立し、その細胞から腎臓前駆細胞への分化誘導を行なったところ誘導能がリセットされ我々の目的に使用できることが判明した。したがって今後の研究はこの細胞群を使用して研究を展開することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、iPS細胞からのみでなく樹立した間葉系幹細胞を脱分化させて腎臓前駆細胞に分化させてiPS細胞由来腎臓前駆細胞と比較する予定であった。これまでの研究ではGDNF遺伝子導入した間葉系幹細胞を用いて再生腎臓を作成していたが、網羅的に関連遺伝子導入を行なったが従来の細胞以上に効率よく再生腎臓を作ることができなかった。したがって間葉系幹細胞から腎臓前駆細胞への分化誘導は断念せざるを得なかった。しかし上述のように当研究室で樹立したiPS細胞由来腎臓前駆細胞は腎臓への分化能が非常に優れていることが確認され、今後の研究に十分使用ができることがわかったため、至適腎臓前駆細胞の選定という当初の目的には達していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)腎臓前駆細胞によるラット内純粋再生腎臓の樹立 上記にて選定した腎臓再生用前駆細胞をEx Utero細胞注入法により腎臓欠損マウスの腎臓再生ニッチに注入し、そのまま発生を継続させることにより腎臓を持つ生仔が得られることを確認する。すでにin vivo培養下の後腎組織とMSCおよびKumamoto法により樹立した腎臓前駆細胞を共培養することにより、成長後腎組織に取り込まれ、WT-1等の成熟腎臓が持つ分子を発現開始することが確認されており、的確にニッチに注入できれば腎臓へ分化させることは可能と考える。これまで、2系統の交配による腎臓欠損マウス樹立とDs-Red TGマウスの後腎組織の採取日時を同期するのが難しく、1ヶ月に1回程度の実験しかできていなかったが、本申請はそれぞれの飼育匹数を大幅に増やすことにより対応する。 2)腎臓欠損ブタを用いた改良型エコー下細胞注入デバイスによる注入細胞由来腎臓の樹立 マウスを用いて選定した腎臓再生に最適な患者由来の腎臓幹細胞を用いて、腎臓欠損Sall1KOブタを用いたスケールアップシステムの開発を行う。現在E40の妊娠ブタに経皮的エコーガイド下に正常胎仔の腎臓部位に細胞注入することは成功している。しかしE40では発生がかなり進んでおり腎臓再生ニッチとしては十分機能しないことが予想される。腎臓欠損ブタであるので、本来腎臓が出来るはずであった部分、つまりニッチが大きくかつ長時間空いていることが予想される。そこでエコーガイド下に上記で開発したデバイスを大型動物用に改良して用いて細胞注入することにより、より腎臓発生初期(E30)に近い胎仔に注入を試みる。これにより透析患者由来腎臓原器の樹立が可能となると予想される。腎欠失ブタはすでに樹立済みのSall1KOブタを用いる。
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Research Products
(1 results)