2017 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞由来口腔上皮細胞を大量調製するための培養基材の設計
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16H03182
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 功一 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (50283875)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 伊佐雄 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (40346507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 口腔上皮細胞 / 分化誘導 / 上皮増殖因子 / 神経栄養因子 / 細胞外マトリックス / バイオリアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
歯の完全再生が可能になれば、歯の喪失によって損なわれた口腔機能を回復させることができるようになり、患者にとってその恩恵は計り知れない。現在、発生過程にみられる上皮間葉相互作用をうまく再現すれば歯を再生させることができると考えられ ている。しかしながら、そのトリガーとなる口腔上皮細胞を入手することが困難なため、歯の再生を医療として普及させることは現実性に乏しい。我々はこれまでに、多能性を有する人工多能性幹細胞(iPS 細胞)から口腔上皮細胞を分化誘導するための方法を探索してきた。その結果、iPS 細胞に神経栄養因子NT-4を作用させることによって口腔上皮細胞を分化誘導できることを見出した。この知見を活かして本研究では、口腔上皮細胞の誘導効率を向上させ、また、大量で純度の高い口腔上皮細胞集団を得ることを目的とする。とくに、NT-4や NT-4模倣ペプチドを表面に固定化した培養基材を作製し、口腔上皮細胞を選択的かつ迅速に増幅するための培養基材を開発する。 以上の目的のもと、平成29年度はとくに、iPS細胞培養の各種の条件や基材表面にコーティングする細胞外マトリックス等の影響を検討した。その結果、上皮細胞のマイトジェンとして知られている上皮増殖因子(EGF)を適切な時期に培養液中へ添加すると、口腔上皮細胞の分化効率が有意に上昇することを見出した。さらに、ポリスチレン性培養基材表面にコーティングされたコラーゲン、ラミニン等の細胞外マトリックスが、口腔上皮細胞の分化効率に、顕著ではないが一定の効果があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでにNT-4およびNT-4模倣ペプチド(N-Ac-CSRRGELAASRRGELC-NH2)を表面固定した培養基材の設計に取り組んできた。それらの培養基材を用いて、マウスiPS細胞の培養を行い、口腔上皮細胞を選択的に増殖させる基材としての有用性について評価してきた。その結果、一定の効果は認めたものの、細胞の選択性や増殖性の点で十分に満足できる結果を得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、iPS細胞から口腔上皮細胞への分化効率を高めるため、最適な培地組成について予備的な検討を行い、上皮増殖因子(EGF)の添加が効率の向上に効果のあることを見出した。この予備的検討結果を踏まえ、今後は、EGF添加効果と口腔上皮細胞 マーカーの発現や分化した口腔上皮細胞の機能性に焦点を当て、EGF添加条件の最適化を行う。一方、iPS細胞の分化に及ぼす細胞外マトリックスの影響にも注目し、各種の細胞外マトリックス(I型及びIV型コラーゲン、 ラミニン、フィブロネクチン等)が、NT-4存在下におけるマウスiPS細胞から口腔上皮細胞への分化に及ぼす影響について系統的に比較し、その結果をもとに、口腔上細胞分化用基材の性能向上に役立てる。以上の研究結果をまとめ、最適な培養基材に関する設計指針を明確にする。
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Research Products
(2 results)