2016 Fiscal Year Annual Research Report
発育期における体分節パラメーター変化の競技特性とトレーニングによる変化
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16H03236
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
船渡 和男 日本体育大学, 体育学部, 教授 (60181442)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 三次元人体計測 / 体分節パラメーター / 発育発達 / 競技特性 / スポーツバイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究では、光学式三次元位置検出装置を用いて生体を全身スキャンすることにより再構築した3D画像から、解剖学的基準点に基づいて各体分節を分離した。並行して同被験者についてMRI法による全身スキャンから同一体分節を分離し、その中の組織(筋、骨、脂肪)分布を計測し、体分節質量および密度の推定を試みた。組織分布データを三次元体積データに挿入することにより推定式を作成し、生体での身体体分節の質量、体積、部分質量、重心点あるいは慣性モーメントなどの体分節パラメーター(Body segment parameters)を算出した。 具体的には、三次元人体形状装置(Body Line Scanner)によって全身をスキャンし、再構築された立体画像から、身体60か所に添付した解剖学的モデルを基準としたランドマークにより、Dempsterに準じた体分節に分割した。各体分節の形態データや体積を算出には、新規開発の三次元人体形状ポリゴン生成と体分節体積計測ソフトウエアを用いた。一方同一被験者についてMRI法で全身をスキャンし、体分節毎に分割した後、MRI横断面画像から筋、骨および皮下脂肪組織を同定し各組織面積を計測した。このデータを体分節体積画像に挿入して当該体分節の質量分布、質量、質量中心及び慣性モーメントなどを算出した。 生体での三次元人体計測の全身スキャンから各体分節を解剖学的基準に基づいて分離し、それぞれについての体積や体積中心を求めた。組織分布データを三次元体積データに挿入することにより再構築し、体分節質量や質量分布、質量中心及び慣性主軸を決定後に3軸に関する慣性モーメントを算出した。 これらのデータから人体のBody Segment parametersの測定法の開発と正確性、再現性と妥当性の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
体の形状には一般的な形態測定値に加えて、体分節ごとの質量、体積、部分質量、重心点あるいは慣性モーメントなどがBody segment parameters(体分節パラメーター;以下BSP)などがあげられており、バイオメカニクス研究では、運動学的諸変量を算出するための基本的入力データとなる。しかし被験者固有のBSPについて実測することは困難であることから、実際には先行研究から得られる推定式等を用いて各々の算出を行っているのが現状である。 これらの研究の多くは、被験者の集団が白人種、高齢者、男性等から得られる少数の屍体標本であったり、本質的には体分節内の密度分布は屍体から求められた値が用いられていることから、ここから得られた値を現代の日本人の人体形状に適用できるかは大いに疑問となるところである。 一方近年、コンピュータ断層撮影法(CT)や核磁気共鳴画像法(MRI)等で得られた断層像から、物体の体積などのBSPを求めることは比較的容易である。しかし、これらの装置は高額であり、かつ設置場所も限られる等の理由で使用が難しく、物体の計測には非接触型三次元計測装置が用いられることが多い。そこで本研究では非接触三次元計測装置から得られたサーフェイスデータからボリュームデータを構築する方法と、それを利用して物体の体積や重心、慣性主軸等のBSPを求めることに発展し、スポーツ科学やスポーツバイオメカニクス研究に寄与することが可能である。 本研究の今までの進捗状況においては、生体を対象として、光学式三次元人体形状側手装置による人体計測値およびMRI法による体分節組織分布の正確性と妥当性を検討し、両者を統合したデータから体分節質量や慣性モーメントなどを算出する方法論が確立できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の方法論の確立によって得られたBSPについて、同種目でのトップ競技者あるいは同一年齢の他種目競技者を比較して、特にジュニア競技者の競技特徴あるいは発育発達による特異的な特徴を明らかにする(競技者は、体操、競泳、陸上中長距離種目、重量挙げなどを予定している)。 また同手法を一般健常人と競技者に適応し、それぞれについてBSPの推定式を作成し、無作為抽出した別の被験者について適応し妥当性を検証する。発育発達による平均的なトレンドに対して、ジュニア競技者のトレーニングによる特異的なBSPの変化を定量化する。 具体的には以下の推進方策を検討している。 =体分節パラメーター推定式の妥当性の検討とジュニアアスリートへの応用= 発育期競技者を対象として、競技特性やトレーニングによる変化の観点から従来のパラメーターを用いた方法との比較を行う。つまり屍体、幾何学的手法および写真分析法など従来から求められている手法でBSPを算出し、本研究で求めた値と比較を行う。被験者を男女の体操競技、競泳競技、陸上中長距離およびウエイトリフティング競技のジュニアアスリート(中学、高校生)を対象として、BLS法とMRI法とにより体分節パラメーターを算出することにより発育やトレーニングによる体分節パラメーターの変化をとらえる。一方MRI法を併用して求めた体分節パラメーター推定式の妥当性を検討するために、身長や体重の異なる成人男女およびアスリートを無作為に抽出しBLS法のみによる推定法を用いて体分節パラメーターを推定する。
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