2018 Fiscal Year Annual Research Report
Importance of postexercise calcium ion dynamics to regulate the adaptation of myocytes
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16H03240
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
狩野 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (90293133)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞内カルシウムイオン / 骨格筋 / 筋損傷 / タンパク質合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内カルシウムイオン濃度は非常に低い濃度で維持されており,その変化によって細胞内の様々な細胞応答が制御されている.その一つとして,骨格筋ではタンパク質合成を活性化することが知られている.これまでに細胞外からの流入により伸張性収縮(ECC)では細胞内カルシウムイオンの増加をともなうことを報告した.しかしながら,ECCによって増加した細胞内カルシウムイオンおよびタンパク質合成経路の活性化の関連性は不明である.そこで本研究は,ECC後の損傷再生過程の安静状態の筋における筋線維のカルシウムダイナミクス(空間・時間的な濃度変化),およびタンパク質合成因子の活性化が見られるという仮説を検証した.Wistar系雄性ラットの前脛骨筋(TA)に電気刺激によるECCを負荷し,麻酔下において生体内環境を維持したまま1,3,7日後のTAを露出させ,細胞内カルシウムイオン蛍光指示薬(Fura-2)を負荷し,細胞内カルシウムイオンダイナミクスを数時間観察した.その後,筋を摘出しウエスタンブロッティングによりmTOR系の定量を行った.ECC後,細胞内カルシウムイオン濃度が高くその変動も大きい1日後ではmTOR,p70S6K,S6,eIF4Gのリン酸化の亢進が見られた.また,細胞内カルシウムイオン濃度が低く変動も小さい3日後ではmTOR,eIF4E,eIF4Gのリン酸化,細胞内カルシウムイオン濃度が再度上昇し変動は小さい7日後ではmTORとeIF4Eのリン酸化が亢進した.これらの変化にAktのリン酸化は伴わなかった.以上の結果から,ECC後の損傷再生過程において筋細胞内細胞内カルシウムイオンダイナミクスが見られ,また,mTOR系の一部活性化を介したタンパク質合成の亢進が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は,ラットを用いて伸張性筋収縮が誘発する筋損傷モデルを作成し,in vivo観察モデル (Sonobe et al.2008, Eshima et al.2013を改良)によるカルシウムイオンダイナミクスを評価した. その結果,運動誘発性筋損傷後のカルシウムイオンダイナミクスの動態特性の特性を確認するとともに,同じプロトコールを用いてタンパク質合成経路との対応関係を明らかにした.1-3日後はp70S6KならびにS6,3-7日後においてmTORおよびeIF4Gのリン酸化が亢進していることが示された.さらに,これらの特性がカルシウムイオンダイナミクスによって直接的に制御されているのかについて確認する必要性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,運動後のカルシウムイオンダイナミクスの役割を明らかにするために,筋小胞体やミトコンドリアの薬理的阻害によって, 1. カルシウムイオンダイナミクス, 2. タンパク合成経路のシグナルがどのように変化するのかについて解明を進める. 実験モデルとして, 1) in vitroコントロール,2) in vivoコントロール,3 )in vivo筋収縮負荷(エキセントリック:ECC負荷)において,薬理阻害の有無のモデルをそれぞれ設定する.筋収縮負荷後,数日間(1,3,7日後)のフェーズにおいて,カルシウムイオンダイナミクス,ならびにタンパク合成経路のシグナルを検証する. また,筋収縮負荷に加えて,カルシウムイオン動態に影響する温熱負荷による検証をすすめる.これは,筋損傷を回復の経過におけるカルシウムイオンの役割を解明するためである.筋収縮負荷後の温熱負荷後,In vivo モデルによってCa2+ダイナミクスを評価する(負荷直後~数日後の経過時点)するとともに,観察後,筋を摘出し,タンパク質合成(AKT, mTOR, S6K)ならびに分解(カルパイン,アポトーシス,AMPK)に関与するタンパク質のリン酸化をWestern blot法により評価する予定である.
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Research Products
(5 results)