2016 Fiscal Year Annual Research Report

運動が生体リズムと時計遺伝子発現に及ぼす影響

Research Project

Project/Area Number	16H03254
Research Institution	University of Tsukuba
Principal Investigator	徳山薫平筑波大学, 体育系, 教授 (00207565)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	麻見直美筑波大学, 体育系, 准教授 (10300005) 萱場桃子筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (20759055) 鍋倉賢治筑波大学, 体育系, 教授 (60237584) 緒形ひとみ広島大学, 大学院総合科学研究科, 助教 (80455930)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords	早朝の運動 / 生体リズム / 体温 / 血糖 / 時計遺伝子
Outline of Annual Research Achievements	２４時間の間接熱量測定から、早朝空腹時（６時起床、運動は７時に開始）の運動（最大酸素摂取の６０％強度で６０分）は夕方（朝食と昼食を摂取した後、運動は１６時開始）の運動に比べて、他の時間帯に行う運動に比べて、1）脂肪酸化への依存度が大きい、2）炭水化物への依存度が小さい、3）運動前のグリコーゲン貯蔵量が既に低下しているので、運動後に顕著なグリコーゲン枯渇をもたらす、ことなどを確認した。この時の代謝内分泌機能について、血糖持続測定装置と採血によるホルモン測定等で検討すると、早朝空腹時の運動が低血糖を惹起することはなく、むしろ夕方の運動直後に血糖が低くなることがあった。また採血（6:00, 9:00, 12:00, 15:00, 18:00, 21:00, 23:00および翌朝6:00）により測定した血漿インスリン濃度には朝の運動と夕方の運動試行間に顕著な差は認められなかった。一方、血漿遊離脂肪酸濃度は朝食前の運動直後に上昇し、特に不飽和脂肪酸濃度の上昇が顕著であった。飲み込み型体温計で測定した深部体温の経時変化では、運動時の体温上昇と睡眠時の体温低下（入眠後に低下するが、睡眠の後半には体温が上昇した後に覚醒に至る）等が認められた。睡眠時の体温は夕方運動においてやや高い傾向が認められた。血球の時計遺伝子（NR1D1, NR1D2, Per1,Per2, Per3, ARNTL, clockなど）発現の解析を開始して、データを得始めた。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 時計遺伝子発現の定量は私達の研究グループとしては初めて挑む測定法であり、大幅な遅延の可能性もあったが、PCRを用いた定量法が確立され、おおむね順調に進展している。小型睡眠脳波計を用いての睡眠の解析については、市販の睡眠計では電極の粘着性が弱いので睡眠全体のデータを採取出来ないことが多く、また解析コストが高い（１万円／件）などの理由から実施に至っていない。研究代表者が学内連携PIを務める国際統合睡眠医科学研究機構が現在開発中の簡易睡眠計の完成を待って睡眠の解析を再開する予定である。
Strategy for Future Research Activity	早朝空腹時に行う運動が24時間の脂肪酸化を促進する効果は男女いずれの被験者においても認められたが、睡眠時の呼吸交換比（RQ）の経時変化には性差があることを見いだした（RQは就寝後低下するが、女性では覚醒5-6時間前から、男性では覚醒2-3時間前から上昇に転じる）。今後は性差にも注目して運動が生体リズムと時計遺伝子発現に及ぼす影響についてのエネルギー代謝研究を進める。血球サンプルの遺伝子発現については、時計遺伝子に加えて、細胞特性を示唆する他の遺伝子発現を解析し、mRNAの主な由来等を解析したい。また唾液中の時計遺伝子mRNAの定量法を確立し、フィールド実験で確認するための基礎検討を行う。本研究では、脳波の解析を睡眠時に限定して考えていたが、低周波数域のθ波が覚醒時間帯での睡眠欲求の蓄積を反映するという最近の研究がある（Neuroscience 102:493,2001）。この指標を新たに生体リズムの解析に加えて運動の影響について検討する。